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軟酥の法

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令和4年6月17日

 

先日の「〈ため息〉の秘伝」に続いて、「軟酥なんそほう」を伝授しましょう。

これは江戸時代の名僧・白隠禅師はくいんぜんじの『夜船閑話やせんかんな』という著作に載っている健康法です。この著作は当時のベストセラーで、禅師の人気を証明するものでもありましょう。禅師は自らがわずらった結核とノイローゼを、この「軟酥の法」によって克服しました。それだけに、実践体験からの説得力があります。

簡単にお話しますと、まず〈軟酥なんそ〉という不老長寿の秘薬を頭の上に置くと観じてください。つまり、イメージするのです。とは牛乳を煮つめて作った、チーズの少し手前の状態です。軟酥ですから、柔らかい秘薬です。実は真言密教でもこの酥を重んじ、たとえばお護摩で火の中に供える油を「酥蜜油そみつゆ」といい、油に酥と蜂蜜はちみつを加えて用います。仏さまがお喜びになる供物といえましょう。

その酥が呼吸とともに流れ出し、下へ下へと体内にしみわたっていくと観じるのです。そして、病気を患った内臓や器官をいやすとイメージしてください。たったこれだけですが、癒しの効果は私が保証します。現代の、がん細胞が小さくなっていくとイメージする〈サイモントン療法〉にも通じましょう。

イメージをするだけで本当に効果があるのかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょうが、実は大変なパワーがあるのです。たとえば、酸っぱいものをイメージするだけでも、たくさんの唾液だえきが出るではありませんか。もっと高度になると、手をケガしてきずを負った時など、その手に氷の手袋をしたとイメージすると痛みが和らぎ、これを「手袋麻酔てぶくろますい」などといいます。つまり、イメージという心の働きは、物質世界を変えることができるのです。心の働きは皆様が想像する以上に、大きな力があることを知りましょう。

ついでですが、真言密教には〈正念誦〉といって、本尊(仏)が唱える真言が梵字となって自分の頭上より入り、自分が唱える真言もまた梵字となって本尊の臍輪さいりん(おへそ)より入り、これをくり返して本尊と一体になるという行法ぎょうぼうがあります。私はこれも健康増進や病気平癒のイメージ療法になると考え、自分でも実践しています。真言密教の行法とは、イメージ療法にも通じるものなのです。

さらについでですが、あさか大師での僧侶志願者が増えています。皆様の目的はさまざまですが、心身を癒す療法としても、大きな効果があることをお話しています。興味のある方は、ホームページの「僧侶になる方法」をご覧ください。

〈ため息〉の秘伝

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令和4年6月11日

 

若い頃に愛読した自己啓発の本に、「ため息をするほど幸運が逃げて行く」という意味のことが書かれてありました。私はその時、「なるほど!」と思い、ため息は極力やめようと心がけたものです。たしかに、気落ちしたようでありますし、まわりへの配慮としてもよいとはいえません。

ところがその後に、「ため息こそはいやしの妙薬である」というまったく逆の説を耳にしました。そうすると、これもまた本当のような気がしてきます(笑)。いったいどちらが正しいのか、とは思いましたが、何のことはありません。よく考えると、すぐに結論が出ました。

つまり、これは心の問題だということです。不平不満の心でため息をつけば、これは間違いなく幸運を逃がします。しかし、反対に疲れを癒し、ストレスを発散させるつもりでため息をつくと、これが実にいいのです。特にお風呂に入ったその瞬間こそは、絶好のチャンスです(笑)。一日の疲れをいっぺんにき出すような、そんな気分に浸れるものです。

ため息は一種の呼吸法なのだと心得ましょう。気持ちをリラックスさせるために、私たちの身心が自然にため息をさせるのです。疲れた時やストレスがたまった時、これを吐き出すために本能がため息を呼ぶ(吐く)のです。つまり、先に〝出す〟ためなのです。出さなければ、イイものを入れることができないからです。「出入口」とは言っても、「入出口」とは言いません。満員電車も、先に降りる人が出なければ、乗る人が入れません。「呼吸法」も同じです。先にう(吐く)から、えるのです。だから、ため息はイイものを入れるための呼吸法といえるのです。

そこで、お風呂でため息をする時の、とっておきの秘伝をお伝えしましょう。まず、自宅の狭いお風呂であっても、目を閉じてこれまでに入った最高の露天風呂をイメージしてください。山奥の澄んだ空気やせせらぎの音を想い浮かべてください。そして、思い切りため息をしながら、お腹をへこませます。次に静かに鼻から息を吸い、お腹(丹田たんでん)をふくらませ、これを四、五回くり返します。その時、清らかで強い〈気〉をいっしょに吸い込むとイメージすることが大切です。くれぐれも、その日のイヤなことを思い浮かべてはなりません。

たったこれだけですが、心身ともに壮快になります。毎日、新しい自分が誕生します。費用もかからず、出かける必要もありません。お風呂に入って、温まる時間を活用するだけです。私がストレスをためずに毎日、元気に働けるのはため息のおかげなのです。皆様も、ぜひ。

笑門来福

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令和4年1月13日

 

今年もたくさんの年賀状をありがとうございました。私は年末は多忙なので、「立春大吉」にちなんだ〝春賀状〟なるものを考案し、もう20年近くも続けています。一年の始まりが立春にあることは、暦の上では常識です。だから、春賀状はきわめて理にかない、しかも年末の多忙さまで補助してもらえるのです。

おはずかしながら、実はこの春賀状が好評で、毎年これを心待ちしてくださる方が多いのです。中には、額に入れて拝んでくださる方もいると聞きました。気のせいか、これをマネる僧侶の方も増えて来たように思います。もうしばらくです。来月の2月4日を楽しみにお待ちください。

年賀状の決まり文句は「あけまして云々」のほか、「賀正」や「謹賀新年」がありますが、さすがにありきたり過ぎる気はします。中には「笑門来福しょうもんらいふく」という、うれしい四文字も目につきます。そこで今日は、笑いについてのお話です。

そもそも、人は笑うから福が来るということです。福が来たから笑うのではないのです。その証拠に、よく笑う人は幸せに(もちろん、一般的な意味ですが)暮らしています。その笑いがまた次の福を呼び、また笑うからその次の福を呼ぶのです。だから、笑いの絶えない門(家)には福がやって来る、「笑うかどには福きたる」なのです。おわかりでしょう。

私はいろいろな方からご相談を受けた時、その方が笑うか否かを重視しています。なぜなら、笑う人に対しては「この人は大丈夫だ」と思えるからです。もちろん、ご祈願もご回向も勧めますが、笑いのオーラ(!)が困難を乗り越えることを知っているからです。

お会いして逆に困るのは、笑わない人です。何とかして明るい笑いのオーラを呼び寄せたいのですが、なかなかうまくいきません。そこで「無理をしてでも、笑うふりをしてごらん」とか、「鏡を見ながら、暗示をかけてでも笑ってごらん」などとお話します。また、いっしょに食事をしながら冗談をいいますと、少しずつ変わって来ます。お顔立ちも変わって来ます。

「百薬の長」は、お酒より笑うことです。お酒は飲み過ぎれば害になり、出費もかかりますが、笑いはいくら笑い過ぎて健康を害することはなく、しかも無料です。ストレスを除き、血流を改善し、免疫力を高め、美容効果ももたらします。まさに「笑門来福」です。

歯周病への警告

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令和3年11月30日

 

2019年、医学界に衝撃的なニュースが報じられました。それはアルツハイッマー病患者の脳内から歯周病の原因とされるジンジバリス菌が発見されたからです。これによって、脳内は鉄壁てっぺきの守りに囲まれて、異物が侵入すことはないという従来の常識がくつがえされました。

たとえば、日本でもベストセラーになったカリフォルニア大学名誉教授の『アルツファイマー病 事実と終焉』では、脳に毒物が入ってしまう原因として次の三つをあげています。

①炎症(感染・食事または他の原因によるもの)

②栄養不足(補助的な栄養素、ホルモン、その他脳の栄養が足りない場合)

③毒素(金属やカビなどの微生物が発生する場合)

アルツハイマー病の直接の原因はまだ解明されていませんが、脳に何らかの毒物が入ると、それと戦うためにアミロイドベータ(Aβ)という物質がたまって機能障害をおこすらしいのです。このことは、九州大学や北京理工大学(中国)などの研究チームによっても盛んに研究されています。

その他、歯周病は全身に悪影響を及ぼし、がん・脳出血・心臓病をはじめ、糖尿病・胃炎・腸炎・肺炎・肝炎・腎炎・早産などの原因となることがしだいに判明しました。歯で食べ物をよくむという行為は、脳の活性化をうながし、内臓器官とも密接な連結をはかっているのです。歯周病によって一部の歯を失ったり、すべての歯を失うということは、噛む力を失うと同時に、アルツハイマー病や多くの疾病と呼ぶことを知らねばなりません。

ちなみに、私はまずまず歯は丈夫な方で、白くて歯並びもよく、皆様からもほめられます。子供の頃から朝晩の歯磨きには熱心で、今ではさらにリステリンを用いて口内の消毒を心がけています。ついでですが、人の悪口を言った時も消毒し、お大師さまにおびをします(笑)。さらについでですが、就寝中の口内は特にバイ菌が繁殖はんしょくします。起床した時の口臭やネバネバでわかるはずですです。仲のよい夫婦や恋人どうしが朝のキスをするのはけっこうですが、バイ菌のキャッチボールをしていると覚悟しましょう(笑)。いや、笑い話ではありません。明日はわが身、一生の問題ですよ。

僧侶はなぜ長命か

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令和3年10月31日

 

あくまでも一般論ですが、私が考えている長命の職業は、僧侶・政治家・芸術家などです。異なる統計もありますが、私なりの意見としてお話をいたします。

まず、僧侶が長命だとされる理由は何でしょう。まず第一は読経によってお腹から声を出し、呼吸法を実践していることです。つまり、「声出し健康法」を毎日続けているからです。声は健康のバロメーターであり、声の大きい人は丈夫で働き者であると見て、まず間違いはありません。私などは毎日のお護摩で法螺貝ほらがいを吹き、太鼓をたたき、高い声を張り上げて読経をしていますので、仕事そのものが健康法です。あさか大師で読経をするご信徒の方々も同じで、代謝がよくなって体温が上がり、髪や爪の伸びが早くなるとおっしゃいます。

次に、常に毛筆を持ってお札やお塔婆とうばを書くので、これが指先と脳のフィードバックを生じ、認知症の予防となります。さらに真言密教では、手に印を結んで仏さまの世界を表現しますので、なおさら申し分がありません。また、常にお香の馥郁ふくいくとした薫りにつつまれ、仏さまを礼拝しますので、これだけでも心の平安を保ちます。さらには、法話をするために読書や思考を重ね、知能を働かせていることなどにも要因がありましょう。

政治家も僧侶と同様、声を張り上げて街頭演説や論戦を行います。そして何より、連日の激務にもかかわらず、その対応が上手じょうずです。たとえば、国会の答弁を聞いてもわかるように、何を言われても平然と聞き流して居座いすわり、ストレスをため込みません。これは常人には出来ないことで、激しい競争に打ち勝つ強靭きょうじんな気力がなければ叶いません。私が政治家に対して尊敬を寄せるのは、まさにこのことなのです。

芸術家はそれぞれのジャンルで精神を高揚させ、ファンの人々をも魅了します。これが脳を活性化を呼び、生きる喜びをもたらすのです。ただ、中には狂人的な天才肌もいるので、私生活までは保障できません。私も(もちろん、天才ではありませんが)僧侶としては健康生活でも、著作のために常軌を逸することがあるので、寿命のほどはわかりません。

ちなみに、大変に失礼ではありますが、私が考えている短命の職業は、教員・警察官・公務員などです。これらの職業は常に社会の規範となるべき重責を背負い、上司や身辺の人々に気づかうことが多く、それでいて業務そのものにストレスの解消法が少ないからです。だから、宴会になると日頃のうっぷんが一挙いっきょに爆発し、とんでもない醜態しゅうたいをさらしかねません。自分なりのストレス解消法や健康法を見つければ、長命をまっとう出来ますので、ぜひ実践してほしいものです。酷言多謝。

泣いて涙を流すと

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令和3年10月30日

 

最近はよく、いろいろなホルモンの名称を耳にします。いやしホルモンのセントニン、快楽ホルモンのドーパミン、怒りホルモンのアドレナリン、悲しみホルモンのノルアドレナリンなどといった名称のことです。これらは交感神経と副交感神経による、いわゆる自律神経の働きによって、それぞれに分泌されます。

一般には、日中は交感神経による興奮系のホルモンが分泌され、気持ちを前向きに促進します。一方、夕方から夜にかけては副交感神経によるやすらぎ系のホルモンが分泌され、精神を安定させて休息を求めます。したがって、朝の寝覚めが悪いとか、夜の寝つきが悪い人は、このホルモンバランスが悪い状態であるといえましょう。夜ふかし型の人や、夜間勤務の人が健康を害しやすいのはこのためです。つまり、人は朝早くに起床して太陽を拝み、日中は働いて夕日と共に帰宅し、早めに就寝するのが理想なのです(もちろん、現代人はなかなかこうはいきませんが)。

また、人の性格はさまざまで、ストレスを感じやすい敏感な人と、のんびりとして鈍感な人もいます。ストレスに敏感な人が怒りや不安などで交感神経を緊張させた場合、その対応がうまくいかないと副交感神経が逆流し、無気力や自信喪失におちいることがあります。この時、泣いて涙を流すと、この逆流が融合します。だから、悲しい時は多いに泣いて、悲しみを癒しましょう。悲しみに沈んでガマンを重ねると生きる気力を失い、やがては病気にもなりかねません。したがって、悲しい時に感情をむき出し、泣いて悲しみを吹き飛ばせる人は、意外に健康だといえるのです。

では、ストレスに鈍感な人は健康で長生きであるかといえば、必ずしもそうではありません。なぜかといいますと、生命はストレスを感じても、それを乗り越えることで一段と強い気力を養えるからです。つまり、安穏あんのんすぎる生活からは、生活に弾みがないように、自分の異変に気づかぬようでは、そのまま寝たきりになるかも知れないということです。。

もっとも、まったくストレスのない生活など、現代人にあるはずはありません。たとえ一人の相手でも対人関係が生じれば、そこには必ず何らかのストレスが生じます。それは、夫婦や家族であっても変わりません。要はストレスをいたずらに嫌悪せず、それを持続させず、受け流すことが大切だということです。あるいは人生の達人ともなれば、ストレスとも、病気とも、この世の一切とも、花見をするようなつき合いができるのでしょうか。

「頑張れ、頑張れ!」はやめましょう

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令和3年10月27日

 

日本語は美しいのですが、私がいつも困っていることの一つは「頑張れ」に変わる言葉がないことです。私たちはよく、何かにつけて「頑張れ、頑張れ!」と言います。しかし、人はそんなに頑張れるものでしょうか。その励ましの言葉が、むしろ負担にはならないでしょうか。もちろん努力を重ねることが習慣となり、逆境を乗り越えることを生きがいとさえ思える人もいます。そういう人は励まされなくとも、自力で進める人なのです。

でも、多くの人はストレスから心に不安をかかえ、動悸どうきやめまいに悩み、さらに悪化すると、うつ病にさえおちいってしまいます。中医学(漢方)ではこれを「しん血虚けっきょ」と呼び、血液が脳に昇ってしまって、本来の「心臓の血液」が不足した状態と見ます。このような時に無理に頑張ろうとすると、脳はますます疲れ果て、かえって自信を失う結果にもなりかねません。まずは脳を休め、持ち前の〝頑張れる状態〟に導くことが大切です。

江戸時代の名僧・白隠禅師はくいんぜんじは二十六歳の折、重いうつ病や結核を患いました。しかし、そこはさすがの名僧で、座禅と呼吸法により、みごとにこれを克服しました。その著『夜船閑話やせんかんな』はこれまた名著中の名著で、今日でのベストセラーとも言えるものです。禅師は心気を丹田(へそ下3~9センチほど下の前方)に集めて気を静めて深い呼吸をすると気持ちが落ち着き、心臓への血液もよく巡るようになると説いています。これによって症状も軽減するのでしょう。心の問題を心そのもので立ち向かってはなりません。つまり、心の問題は体から克服すべきなのです。事実、禅師は多くの人々の病気を平癒へいゆさせた実績も残しました。ただ指導者が必要なので、私はよく心の問題を抱えている人に対しては、ウオーキングや山歩き、読経やカラオケ(コロナ禍では自粛じしゅくを)を勧めています。

それにしても、「頑張れ」に変わる言葉はないものでしょうか。時には「頑張らないで、ガンバレ!」と冗談じょうだん(いや、もちろん本音)を放つのですが、いかがなものでしょうか。ほかには「楽しんで」「気楽に」「力をぬいて」「リラックスして」などといった言葉が思いつきますが、どうかな。

続・「調子がいい」とは

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令和3年9月29日

 

それでは、腸の調子がいい状態を保つには、何が必要なのでしょう。いうまでもなく、その答えは「腸内フローラ」にあるのです。つまり、善玉菌・悪玉菌・日和見ひよりみ菌のバランスが整い、まるで腸内がお花畑(フローラ)のように美しく、明るく、生き生きとしている状態のことです。

そういうと、善玉菌さえ増えればいいと単純に思うかも知れませんが、そうとばかりも言えません。善玉菌が二割、悪玉菌が一割、日和見菌が七割のバランスが理想的な腸内フローラとされるからです。優等の善玉菌、不良の悪玉菌、そして、普通ほどの日和見菌がこのバランスで整えば、腸は絶好調といえましょう。便秘をすることもなく、力まずに心地よく、バナナ状の排便をすることができるはずです。

このことは世の中を考えるうえでも、大切なことです。多くの人は、世の中に特別な貢献ができなくても、悪いことをせず、まずまず〝いい人〟になろうと心がけています。これが日和見菌です。しかし、慈悲心をもって、世のため人のために貢献しようとする人が二割ほどはいて、これが善玉菌です。そして、一割ほどの悪人も必要です。それはどういうことかと言いますと、悪の見本を示してくれるからです。こういうことをしてはいけないという見本があるからこそ、人は自らをいましめるからです。これが悪玉菌も必要な理由です。世の中はこのバランスで成り立っています。そして、このバランスを腸内に保つためは、食物繊維や発酵食品を食事に取り入れることが大切です。これによって腸内フローラを保つことができるのです。

最近の研究では、幸せホルモンであるセントニンも、腸管にあることがわかってきました。セントニンは腸内でのトリプトファンというアミノ酸から合成されるからです。このセントニンが脳を高揚させ、幸せを感じることができるのです。つまり、腸内フローラは人生の幸せをももたらし、人生そのものの調子もよくなるということになるのです。

私たちは「腹黒いヤツ」とか、「腹を見せろ」とか、「腹を割って話す」などと言います。これは腸に心があることを、昔から直観的に知っていたからです。また、臍下丹田せいかたんでんという〈気〉の集まる場所でもあり、腹式呼吸をして気持を落ち着かせることもできます。さらに真言密教ではおヘソのことを〈臍輪さいりん〉といい、修法をするうえでも重要なかなめなのです。

腸は脳でもあり、心でもあり、何とも偉大な存在であることがお分かりいただけましたでしょうか。

「調子がいい」とは

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令和3年9月27日

 

「健康は血液で決まる」「人は血管から老いる」などと言いますが、その血液の云々うんぬんを決めるのは大小の腸と、「肝腎かんじん(心)かなめ」の肝臓・腎臓だと私は思っています。もちろん、人の内臓器官に何一つムダなものがあるはずはありません。それでも、腸の働きは特に重要です。なぜなら、私は「調子ちょうしがいい」とは、「腸の調子がいい」ことだとさえ考えているからです。「肝腎要」については以前にもお話をしましたし、法話集『一話一会 第2集』にも掲載しました。ここでは腸について、私なりの考えをお話をしましょう。

腸について、多くの人は食べ物の消化吸収や排泄の器官ぐらいとしか知っていません。ところが、これが大間違いなのです。実は腸こそは「第二の脳」とさえ呼ばれるからです。この定義はアメリカのコロンビア大学医学部教授のマイケル・D・ガ―ション博士が、1999年に刊行した著書『セカンド・ブレイン』に由来します。博士は腸は非常に賢く、豊かな感情を持っている、と発表しました。この衝撃的しょうげきてきな発表はまたたく間に普及し、今や重要な研究課題となりました。

腸が感情を持っていると聞くと、奇妙な感じを受けることでしょう。しかし、腸内には数億という膨大ぼうだいな神経細胞のネットワークが機能し、脳の指令を受けずに独立して働いているというのです。人が脳死にいたれば、続いて心肺停止となりますが、腸ばかりは正常に機能します。つまり、心臓は脳の支配下にありますが、腸は独立し続けるのです。これが「第二の脳」と呼ばれる由縁なのです。

腸の基本的な働きは、もちろん消化吸収と排泄です。しかしそのほかにも、自律神経と深く関わりつつ、病気を未然に防ぐ免疫組織であることがわかってきました。また、消化器官全体に張り巡らされた毛細血管全体を統括とうかつし、人の健康状態を維持管理しています。つまり、危険なものを見逃さず、消化吸収してよいかどうか、消化するにはどんな酵素が必要かを瞬時に判断するのです。まるで、あらゆる物質のデータを備えた高速コンピューターではありませんか。

そもそも、地球上に最初に誕生した生物には、脳などありませんでした。臓器と呼べるのは腸だけだったのです。つまり、食べて生きるという生命活動の根源は腸から始まったといえるのです。たとえば、田や沼に棲むヒドラという1センチほどの生物がいます。水草に付着してミジンコなどを食べて生息しています。脳はなく筒状の先端に口と触手がありますが、あとは腸だけの生物です。ほかの臓器はここから進化したものに過ぎません。これが生物の最も根源的な姿なのです。

始めに腸あり。腸は脳なり。腸こそは「第2の脳」どころか、「第1の脳」なのです。私たちの今の脳は、後に付属した臓器といっても過言ではありません。このお話、次回また。

コロナ対策への私案

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令和3年8月13日

 

新型コロナによるデルタ株の蔓延まんえんははすさまじく、もはや猶予ゆうよのない時となりました。インドばかりではなく、日本がどうなるともかぎりません。ワクチンを打てば感染の可能性は薄れますが、万全とは言えません。〈三密〉どころか、〈一密〉でも感染する状況です。それでも、まずは早く若い方にもワクチンが回るよう、努力を重ねていただきたいと思います。

感染者急増の原因として、若い方の認識の甘さがあることは自明のことです。インフルエンザ程度のことでしょうとか、充分な栄養をとっているから大丈夫だとか、ジムで体をきたえているから安心だとか、これではお話になりません。スマホで情報を集め、もっと認識を深めていただきたいと思います。

ノーベル生理学・医学賞に輝いた大村さとし博士が開発したイベルメクチンによる臨床実験の成果が、各国から寄せられています。寄生虫によるアフリカの疫病から救ったイベルメクチンが、コロナの感染治療に役立つ可能性は高いと思います。博士は「何より重要なのは、科学的根拠やデータを提示すること。その結果により、新型コロナの治療薬となり得るかを判断してもらえれば」と語っています。イベルメクチンはまだ日本では販売されてはいませんが、個人輸入として購入するすることができます。

また、長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究所長の北潔きたきよし教授は、5-ALAアラ(アミノレブリン酸)に着目し、新型コロナ治療への可能性を追求しています。5-ALAは天然アミノ酸ですが、感染症に対する効果が期待されており、こちらはサプリメントとして購入することができます。ネットで検索してみてください。

ワクチンの接種はもちろんですが、手洗い・うがい・消毒・マスクに加え、こうした可能性に期待することも大切ではないでしょうか。コロナ対策への一環いっかんとして私案を述べました。最近よく聞く「命を守るための行動」です。私はもちろん、新型コロナ退散の祈願も怠りません。

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