「頑張れ、頑張れ!」はやめましょう

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健康

令和3年10月27日

 

日本語は美しいのですが、私がいつも困っていることの一つは「頑張れ」に変わる言葉がないことです。私たちはよく、何かにつけて「頑張れ、頑張れ!」と言います。しかし、人はそんなに頑張れるものでしょうか。その励ましの言葉が、むしろ負担にはならないでしょうか。もちろん努力を重ねることが習慣となり、逆境を乗り越えることを生きがいとさえ思える人もいます。そういう人は励まされなくとも、自力で進める人なのです。

でも、多くの人はストレスから心に不安をかかえ、動悸どうきやめまいに悩み、さらに悪化すると、うつ病にさえおちいってしまいます。中医学(漢方)ではこれを「しん血虚けっきょ」と呼び、血液が脳に昇ってしまって、本来の「心臓の血液」が不足した状態と見ます。このような時に無理に頑張ろうとすると、脳はますます疲れ果て、かえって自信を失う結果にもなりかねません。まずは脳を休め、持ち前の〝頑張れる状態〟に導くことが大切です。

江戸時代の名僧・白隠禅師はくいんぜんじは二十六歳の折、重いうつ病や結核を患いました。しかし、そこはさすがの名僧で、座禅と呼吸法により、みごとにこれを克服しました。その著『夜船閑話やせんかんな』はこれまた名著中の名著で、今日でのベストセラーとも言えるものです。禅師は心気を丹田(へそ下3~9センチほど下の前方)に集めて気を静めて深い呼吸をすると気持ちが落ち着き、心臓への血液もよく巡るようになると説いています。これによって症状も軽減するのでしょう。心の問題を心そのもので立ち向かってはなりません。つまり、心の問題は体から克服すべきなのです。事実、禅師は多くの人々の病気を平癒へいゆさせた実績も残しました。ただ指導者が必要なので、私はよく心の問題を抱えている人に対しては、ウオーキングや山歩き、読経やカラオケ(コロナ禍では自粛じしゅくを)を勧めています。

それにしても、「頑張れ」に変わる言葉はないものでしょうか。時には「頑張らないで、ガンバレ!」と冗談じょうだん(いや、もちろん本音)を放つのですが、いかがなものでしょうか。ほかには「楽しんで」「気楽に」「力をぬいて」「リラックスして」などといった言葉が思いつきますが、どうかな。

山路天酬密教私塾

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