「三密」の正しい理解を

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真言密教

令和2年12月10日

 

2020年の新語・流行語の大賞に「三密」が選ばれました。

私は新型コロナウイルスの感染が始まって間もなく、この「三密」なる用語を聞くたびに困惑したものでした。なぜなら、「三密」こそは真言密教における、きわめて重要なキーワードであるからです。真言密教とはまさに、「三密」の教義とその実習にあると定義しても過言ではありません。

もちろん、真言密教の「三密」は、人が密にならない、密を避けるというコロナ対策とはまったく意味が異なります。簡単に説明をしますと、人の言動は体と言葉と心の三つの働きに集約され、それらを通じて祈りを捧げるということです。つまり、合掌をしたり特殊な印を結んで〈身密しんみつ〉となし、口に真言を唱えて〈口密くみつ〉となし、心に浄土や仏を観想して〈意密いみつ〉となし、これを総じて「三密」の行法ぎょうぼうとするのです。

追悼の式典などで、よく「黙祷もくとう」をしますが、祈りは言葉に出した方がより直接に通達します。また、祈りに応じた印を結び、どのように観想するかの規範があれば、そのパワーも増大します。真言密教の祈りは、人の体も言葉も心も総動員した「三密」なればこそ叶うのです。コロナ禍で浮上した「三密」が同じ用語であったことは、まったくの偶然でした。このブログを読んでいただいた皆さんには、ぜひ正しい「三密」の意味を理解してほしいものです。

浄土真宗の教義に「他力本願たりきほんがん」がありますが、まったく誤解されて通用していることは遺憾いかんとしか言いようがありません。宗門には迷惑なお話なのです。このような事実はほかにもたくさんありますが、これが世間というものなのでしょう。

体と言葉と心の中でも、特に注意を要するのは言葉です。だから「口は災いのもと」と言うのです。お大師さまがあえて〝真言密教〟を立宗された由縁もそこにあるのです。人はたった一言から成功もするし、失敗もするのです。ご用心を。

山路天酬密教私塾

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