凛とした品格

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挿花

令和元年7月17日

 

梅雨の花と言えば紫陽花あじさいですが、〈桔梗ききょう〉もまたよく似合います。そこで、いただいた桔梗を〈刈茅〉かるがやと共に挿しました(写真)。うっとうしい長雨の中で、この姿にはとてもいやされます。

桔梗の何がすばらしいのかと申しますと、日本的なりんとした品格を保っていることです。たとえば、春の都忘みやこわすれ(ヨメナギク)や鉄線てっせん(クレマチス)などでさえ、最近は妙にバターくさく(!)なり、本来の素朴さが失われつつあるからです。その点、この桔梗は白花や桃色花などが出回りつつも、まだまだ古来のいろどりを残しています。

桔梗は『万葉集』では「朝顔」の名で歌われています。つまり、朝に咲く花を一様に「朝顔」と呼んだらしく、木槿むくげなども同様です。私たちが親しむ、いわゆる〝アサガオ〟がいつ頃に渡来したのか、原産がどこであるかは、実ははっきりしていません。

木槿もアサガオも夕方にはしぼみますが、桔梗は夕方になっても映えて美しいものです。『万葉集』の一首に、

朝顔は朝露負あさつゆおいて咲くといえど 夕影ゆうかげにこそ咲きまさりけれ(作者不詳)

と、あるのがこのことです。「夕方でも美しい朝顔」こそ桔梗だと知りましょう。そして、最後まで残るのは品格だと知りましょう。

山路天酬密教私塾

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