続・日本人の食事

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食事

令和2年3月11日

 

私が小学校に入った頃でしたでしょうか、日本中に妙な風評が立ちました。

それは、「ご飯を食べるとバカになるから、パンを食べなさい」というものでした。同時に、「『味の素』をとると頭がよくなる」というものまでありました。思い出す年代の方もいらっしゃるのではないでしょうか。現代からすればとんだお笑いぐさですが、当時の日本人は大まじめで受け取りました。本当に信じていたのです。

それからしばらくして、今度は「タンパク質が足りないよ!」というテレビCMが一世を風靡ふうびしました。たしか、クレージーキャッツの谷啓たにけいさんの出演だったと記憶しています。それがやがて「肉を食べなければ体力がつかない」という信仰まで生み出しました。

これらの社会現象には、戦争に敗れた日本がアメリカから大量の小麦粉(パン)や石油(『味の素』は当時、石油から作られていました)、また肉類(タンパク質)を輸入しなけらばならなかった政治的な背景がありました。そして、肉の信仰を決定的にしたのが昭和39年の東京オリンピックでした。体の小さい日本人は、筋肉モリモリの外国人に対して大きなコンプレックスをいだいたからです。特にお家芸の柔道では、そびえるような巨体のヘーシンク選手(オランダ)に敗れたことが、国民に大きなショックを与えました。

では、改めて考えてみましょう。ご飯を食べると本当にバカになるでしょうか。『味の素』で本当に頭がよくなるでしょうか。肉を食べなければ体力がつかないというのなら、昔の日本人が一汁一菜でも重労働に耐え得たのはなぜでしょうか。馬は草やニンジンばかり食べていても、あれだけの〝馬力〟があります。パンダは竹や笹ばかり食べていても、あれだけの脂肪を温存しています。そして体の小さい日本人が、今なお世界一の長寿国です。体力とは何をもって尺度とするか、それはさまざまであることを知るべきです。オリンピック競技に勝つことばかりが体力ではないのです。腸の長い日本人には、外国人とは違った和食が合うことはいうまでもありません。

現代の日本人に、特に若い方に一汁一菜の生活はできません。それでもご飯を食べるとバカになるとも、『味の素』で頭がよくなるとも思っていません。だから「肉を食べなければ体力がつかない」という信仰からも、そろそろ脱却すべきなのです。たまに食べる、少しは食べるくらいが、ちょうどよいのではないでしょうか。日本人はやはり、動物性タンパク質は魚介類を中心にすべきだと思うのです。

昔から僧侶は長命だといわれますが、ご飯と共に味噌・納豆・豆腐などの植物性タンパク質で健康を維持してきたのです。もちろん、漬物つけものなどの発酵食品も重んじました。そして腹から声を出して読経し、仏教について思索しさくを重ね、托鉢たくはつ巡礼じゅんれいでよく歩くことにその秘密があったのです。このお話はさらに続けます。

山路天酬密教私塾

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