感動とひらめきと

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令和5年3月31日

 

何が道理であるか、また何が正しい選択であるかを考えることは大切なことです。しかし、私たちは時に、間違った判断をすることがあります。それは正確に自分が見えていなかったからかも知れませんし、考える力が足らなかったからかも知れません。

しかし、ここにもう一つの確かな手立てがあることも事実です。それは美しいものに心を寄せ、感動することです。美しい芸術や音楽にふれ、生きている喜びを知ることです。それによって、頭脳の思考では到達し得ない瞑想世界が顕現けんげんするからです。このことは、人生を豊かにする大きな意義を持つに違いありません。

かつて、昭和期に活躍した岡潔おかきよしという天才的な数学者がいました。誰も解けなっか数学の三大難問を、独りで解き明かしたという業績があります。奇行きこうの多い人でしたが、文化勲章を受章した折、記者から「数学で最も大切なことは何ですか」と問われました。その時、「野のスミレに感動する心です」と答えたそうです。思考の極意は、感動とひらめきだという意味なのでしょう。私はこのエピソードが忘れられず、感動する心がなければ、〈真〉からも〈善〉からも遠のくのではないかと考えるようになりました。そして、スミレの〈美〉をすら知らない自分を、大いに恥じたものでした。

野の花こそは最も身近で美しい、自然界の芸術であるかも知れません。以来、私は野の花の名前を覚え、感性の向くまま古器に挿し、エッセイを添えた書籍まで刊行するまでになりました(写真は『邑庵花暦』『花は野の花』創樹社美術出版)。

また、あさか大師ではこのほど、ささやかな花壇を造成し、桜とともに野の花が楽しめるよう工夫しました(写真)。特に現代では、花屋さんからすでに姿を消した日本の野趣にふれていただきたいと考えています。

これから春の花がたくさん開きます。お大師さまのお護摩で祈願を込め、野の花にふれて自然界の芸術にふれていただくことを念じてやみません。感動とひらめきとが、皆様にも訪れますように。

山路天酬密教私塾

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