端午の節句

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文化

令和3年5月5日

 

今日は〈端午の節句〉で、菖蒲しょうぶ柏餅かしわもちをお求めになった皆様もいらっしゃると思います。午後にちょっと買い物に出ましたら、スーパーの特設売り場で、菖蒲を買う方があまりに多いのには驚きました。また、隣りの和菓子屋さんの前には20メートルもの行列があり、柏餅を求める方々でいっぱいでした。店内への入場制限からとは思いましたが、それにしても日本の風習もまだまだ健在のようです。

私の生家(栃木県の農村)にはき水があり、そこに天然の菖蒲が生えていて、端午の節句に事欠くことはありませんでした。昔の天然の菖蒲は香りぷんぷんで、湯に入れると、それこそ〈香湯〉そのものだったのです。また、以前は川越のご信徒さんが端午の節句ともなれば、頼まずとも天然の菖蒲を届けてくださいました。その方が他界なさって以来、私は菖蒲湯に入ったことはありません。なぜなら、売られている菖蒲を手にしても、たいした香りがしないからです。

柏餅にしても、実家のまわりには柏の木がありましたから、これにも事欠きません。また、堂々たる〈こいのぼり〉が屋根上まで列をなし、家々がそのカラフルな数を競ったものでした。今時のようにマンションやアパートのベランダに見る鯉のぼりは、何ともメダカ(失礼!)ほどにしか映りません。

端午の節句も、本来は旧暦(つまり約一ヶ月先)での風習です。梅雨に入れば大雨や疫病といった被害をもたらすので、その邪気を祓うという意味から菖蒲の香りが尊ばれました。また、菖蒲の葉は日本刀に似ており、その名も〈尚武しょうぶ〉に通じます。鎧冑よろいかぶとを飾るのもこの由来からで、武家では特に重んじました。実際、正面に菖蒲を飾った冑も作られました。

またかしわの木は冬になっても葉が落ちず、新芽が出るまで落葉しません。つまり後継あとつぎを絶やさないとう縁起から、柏餅かしわもちを食べるようになりました。昔の農村では山ほどに作り、神前や仏壇にも供え、親類にも配りました。私が子供の頃は、10個ぐらいは平気で食べたものです。

鯉のぼりはともかく、菖蒲湯や柏餅といった古き良き日本の風習が、永く続いてほしいと願わずにはいられません。文化はこんなところから生まれるからです。私も来年からは、天然の菖蒲を求めることにいたしましょう。

山路天酬密教私塾

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