レディー・ファースト

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文化

令和2年3月27日

 

皆様、決して笑わないでください。私は最近、レディー・ファーストを心がけているのです。

ある時、近所のスーパーに入ろうとしました。スーパーの出入口はもちろん、お客がすれ違うほどの広さは十分にあります。しかし中年の女性が一人、ちょうど外に出る直前だったので、私はとっさに身をよけて彼女に先をゆずりました。すると、彼女は恐縮したように私にていねいな会釈えしゃくを返してくれたのです。たしかに、こんなマナーを身に着けた男性は、日本にはほとんどいません。

しかし、このささやかな経験は、私の人生に大きな変化をもたらしました。その一日が、どれほど充実したことでしょう。まるで、大きな宝物でも手にしたような気分になったのです。

以来、私はスーパーはもちろん、コンビニでも郵便局でも、その出入口ではレディー・ファーストを心がけるようになりました。まず、たいていの女性は会釈を返してくれます。いつも思うのですが、〈出入口〉という言葉はまず〝出る〟ことを意味します。だから出る人を優先すべきであるのに、こんな常識すら通用していません。しかし私は、出入りのいずれであっても、レディー・ファーストはかなり身についてきました。私が特に、道徳的にすぐれているからではありません。それによって気持がよくなることを覚えたからです。

日本は武士道は発達しましたが、騎士道きしどうの心がけがまったくありません。特に男性にとって、レディー・ファーストは大の苦手です。それは男尊女卑だんそんじょひの先入観はもちろん、相手の女性に対して自分より年上なのか、レディーなのか小娘(!)なのかを意識するからです。しかし欧米では、子供の頃から「女性を見たら誰であってもレディー・ファースト」と教え込まれます。つまり、無条件で優先するのがレディー・ファーストなのです。私はこの教えを自戒じかいしてからは、自然にレディー・ファーストが身についたような気がします。

しかもこのレディー・ファーストが身につくと、横断歩道に渡ろうとする人、車道を走る自転車の人に対しても、苦もなく譲れるようになりました。そして、人生の時間がゆるやかに流れ、せかされることさえ少なくなったように思えるのです。私の人生にとって、思いもかけない大きな収穫でした。とてもありがたいことです。

レディー・ファーストを実行したからといって、自分の負担に大差はありません。むしろ、得られる豊かさの方が多いはずです。小学校の授業にも、会社の研修にも取り入れてはいかがでしょうか。日本が大きく変わるはずです。そして武士道と騎士道が融合ゆうごうすれば、まさに鬼に金棒、世界最強の国になるでしょう。それこそ、本当の文化というものです。

山路天酬密教私塾

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