降りのエスカレーター

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仕事

令和元年9月6日

 

二か月ほど前でありましたか、運転中にめずらしくラジオをつけました。何の番組であったのか、シンガーソングライターのさだまさしさんがゲストに呼ばれているらしく、司会者の質問に答ええているところでした。その司会者が言いました。

「さださんは天才だから、作詞も作曲も思いのままなんでしょう?」

ところが、さださんは意外なことを言うのです。

「とんでもない! 毎日毎日、くだりのエスカレーターを下からけ上がって、その速さに負けないよう、真ん中あたりで必死にもがいている心境ですよ。本当ですよ」

こういう言葉を聞くと、なるほど今日はこの言葉を聞くためにラジオをつけたんだな、とさえ思うのです。さださんにはたくさんのヒット曲がありますが、私たちは楽しんで聴いているばかりで、いったいどれほどの苦難をてその歌が生まれたかを知りません。この司会者なども、名曲は泉のようにいてくるほどに思っていたのでしょう。

降りのエスカレーターを、下からから駆け上がる心境と言うのです。なるほど、降りのエスカレーターを逆に駆け上がるのは、容易ではあありません。ちょとでも油断をしたら、たちまちそのまま、下に引き降ろされることでしょう。シンガーソングライターとしての不動の地位も、影ではこんな代償だいしょうを払っていたのです。

たぶん私は、この日のさださんの言葉は、一生忘れないと思います。ほんの一端ですが、私にもその心境がわかるからです。さださんは歌い終われば息をつくヒマもなく、いつも降りのエスカレーターが待っているのでしょう。その試練に耐えられなければ、あのような名曲は生れないということなのです。

山路天酬密教私塾

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