令和元年5月9日
何年前でしたか、『病気にならない生き方』という本がベストセラーになりました。この本には、牛乳は子牛の飲み物であるから乳製品は体によくないと書かれています。すると今度は『病気にならない生き方で、なる病気』という本が出ました(笑)。こちらの本には、牛乳やヨーグルトをとらずして、どうやって健康を守れるのかと書かれています。
同じように、糖質制限で健康になるという意見があれば、糖質制限は危険という意見もあります。朝食は絶対に取りなさいという意見があれば、朝食はぬいた方がいいという意見もあります。運動不足が成人病を招くという意見があれば、長生きをしたければ運動をやめなさいとういう意見もあります。驚いたことには、これらはすべて立派なお医者さんの意見なのです。こうした正反対の意見を聞くたびに、皆様はどうしていいのかわからなくなることでしょう。
私の考えを申し上げるなら、健康法とは百人百様で、要は自分にあった方法を見つける以外にはありません。牛乳が合う人もいれば、たちまちに下痢をおこす人もいます。長い歴史の中で、日本人は米を常食してきたわけですから、糖質をまったく排除するのも不自然な話でしょう。
昔の人は日没とともに家に帰り、夕食をとって早くに就寝しました。そして、日の出前には起床しましたから空腹があたりまえで、もちろん朝食が必要でした。現代人は遅くまで働き、深夜にお酒を飲んで夕食(夜食?)をとります。こんな生活をしていれば、起床しても空腹にはなりませんから、無理に朝食をとる必要はないはずです。
心臓の弱い人がジョギングをすれば負担をかけますし、無謀な筋トレはかえって体をこわします。かといって、運動をしてはいけないというのも変な話です。
仏教には〈中道〉という教えがあります。これは〝中道政権〟の中道ではなく、「ほどよいかげん」のことです。ほどよいかげんは、人それぞれなのです。極端に片寄った考え方には、どこかに無理があるはずです。
この世でたった一人の自分には、たった一つの健康法があるのかも知れません。それほどに、私たちは一人一人が尊いということですよ。