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熱しやすく、冷めやすい人

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令和元年7月22日

 

この道に入って四十年もたちますので、さまざまな人々と出会いました。

よく思うことですが、熱しやすい人は、たしかに冷めやすい傾向があるようです。たとえば私の寺を気に入っていただけるのはよいのですが、ほとんど毎日のようにいらっしゃる方がおりました。

そのうちに、だんだんと親しくなりますから、土産物みやげものなどを持参するようになります。さらに、私の身の回りのものまで買い求めるようになり、プライベートな生活にまで入り込もうとします。そうなると独占欲が現れますから、まわりの方々とうまくいくはずがありません。結局はしだいに身の置きどころを失い、急速に遠ざかってしまいます。

このような方は、人と人との空気が読めないのでしょう。熱しやすい分だけ、自分の視野しか見えません。勢いに乗って突っ走るだけに、すぐに燃料が切れるか、エンストをおこすのです。これに対して、時々はいらっしゃるものの、気に入っているのか、どうなのかが読みにくい方もおります。しかし、こんな方こそ地味なおつき合いが続き、私にとっても大事なご信徒になるものなのです。人は見た目も大事ですが、見た目でけではわからないのもまた事実なのです。

このことは世の中を見てもわかります。あまりに急速な成長は、必ずどこかで無理が生じるのです。一挙に売り上げが伸びた商品は、残念ながら一挙に消えるのです。だから、昔から知られた胃腸薬などは急速に売れ上げが伸びることはありませんが、消えることもありません。大したものだな、と思います。

私たちもいきなり飛びつこうとした時は、少し頭を冷やして考えた方がよさそうです。一夜明けて忘れているようなら、それはもともと、どうでもよかったものかも知れません。本当にやりたいこと、本当に買いたいものは熟慮を重ねても、なお残るはずです。このお話、役に立ちますか、皆様。

友、遠方より

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令和元年7月15日

 

そば打ちを修行しだ宇都宮の友人が、夫人と共に訪ねて来てくれました。

彼は中学校時代の同級生ですが、実は何十年も疎遠のままでした。それが、ふとした縁で親しくなり、今ではご覧のとおりです(写真)。今日のは栃木県・高根沢町産と益子町産のブレンドそば粉だそうで、精魂を込めた打ち立てをそのまま運んで来てくれました。さすがに会得した技術はすばらしく、びっくりするおいしさでした。

そばはビタミンB、アミノ酸(タンパク質)、食物繊維を多量に含み、精白米やうどんに比べてもバランスの良い穀物です。そして、何よりも特記すべきは、ポリフェノールの一種であるルチンが豊富であることです。ルチンは毛細血管を強くして血圧を下げ、血液をサラサラにする働きが認められています。また、コリンの働きによって脂肪肝や動脈硬化を防ぎ、糖質も少ないので太りにくく、アンチエイジング食品としても申し分がありません。

いつもお話していることですが、人間とは〝人の〟です。その人の間に空気があり、その空気によって人間関係が決まります。そして、その空気を最も親密にするのは、いっしょに食事をすることなのです。皆様が、ご自分の身辺で何かと気をつかうなと思う人がいるならば、それは共にお茶を飲んだり食事をしたことのない人です。私はこの発想にかなりの自信があり、多くの人々を納得させてきました。

だから、親しくなりたいと思ったら、よけいな講釈など無用です。まずはいっしょにお茶を飲み、食事を共にしてみてください。効果はてきめんです。つまり、「同じ釜のメシ」は今も昔も同じだということです。ぜひ、試してみてください。私のイチオシです。

ちなみに、この友人はセキグチヒロシといい、どこかで聞いたような名です。

嫉妬を転じる

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令和元年6月8日

 

高齢になれば体力が衰えます。これはやむを得ないことです。では煩悩ぼんのうも衰えるかというと、これがまったく逆なのです。年齢と共に、ますます制しがたいのが煩悩でありましょう。しだいに時代から取り残され、若い人のすることがいちいち気に入らないからかも知れません。

中でも、最も制しがたい煩悩は〈嫉妬しっと〉であるといわれています。自分の成功を喜ぶのは当然ですが、他人の成功を素直に喜べないところが嫉妬なのです。嫉妬の文字は、二つながらにオンナヘンが付きます。なるほど女性は、他人の仲のよさをねたんだり、ヤキモチをやくことが多いのでしょう。

しかしながら、実は男の嫉妬はより陰険いんけんで、底知れぬ不気味さがあることをご存知でしょうか。それは男には闘争本能があり、常に競争にさらされて来たからなのです。自分の身辺によりすぐれた人物がいる時、その人物が大きな成功や栄誉に輝いた時、これをねたまぬ男はいません。口ではめたたえても、どこかで嫉妬の感情をも燃やしているのです。ヘタをすると、その嫉妬が憎しみへと転じ、あらぬ事件に進まぬともかぎりません。一国の主なら、国を滅ぼすとさえいわれるほどです。

しかしながら、嫉妬をしていたたまれないような感情を燃やさねば、人間は何も変わりません。いたたまれないようなその気持ちをヤル気に変えれば、新たな生きがいとなるのです。大事なことは、それを上手に使うこと、上手に転ずることでしょう。嫉妬の感情に燃えた時こそは、チャンスなのだと思いなおし、いっそう励むことができるのです。

いうまでもなく、嫉妬は煩悩です。振り回されればそのまま煩悩ですが、上手に使ってこれを転じれば菩提ぼだいとなるのです。嫉妬を転じれば煩悩を転じ、煩悩を転じれば菩提に転じます。退屈なお話でしたか? でも、大事なことです。

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