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仏教
令和2年2月7日
かつて藤原正彦氏の『国家の品格』、坂東眞理子氏の『女性の品格』を始めとして、〈品格〉という言葉が流行しました。
品格とは何でありましょうか。もちろん、今日・明日から品格を身に着けようとしたところで、叶うことではありません。その人の教養・思考・経験・生活・行動など、そのすべてが融合して自然ににじみ出るのが品格でありましょう。
たとえば、そこに紙くずが落ちていたとして、それを気にもしないか、気にはするけれども何もしないか、すぐに拾ってくず籠に入れるか、そんなところにも現れましょう。仏教では「下座の精進」といいまして、自分の立場や身分をいかに下げられるかを大事な修行としています。仏門に入る得度式は、礼拝の連続です。仏に向かって両膝・両肘・額を床に着ける〈五体投地〉をくり返します。つまり、高い品格は、自分を下げることから生じるという教えを実践するのです。下げることから心が清まり、魂が輝き、その品格が高まるのです。この逆説がわかりますでしょうか。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」というではありませんか。稲は実るほどにその穂を下げるものです。人もまた、その品格が高いほど謙虚にふるまうものです。逆に品格の疑わしい人ほど尊大で、増上慢な態度をふるまうはずです。覚えはございませんか。
成長する会社の経営者は自らトイレ掃除をしたり、社員と同じ立場で対話をするはずです。社員もまたそんな社長を信頼し、仕事に励み、その会社が成長していきます。戦後日本を動かした偉大な経営者の方々を見れば、それは十分に理解できましょう。女性の品格も、国家の品格も、すべては謙虚でなければ高まりません。