気になる迷信②

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令和4年8月1日

 

⑤茶柱が立つと幸先さいさきがいい。

茶柱とは茶碗に浮いた、茶葉(くき)のことです。これは迷信というより、いわば「縁起がいい」というほどの部類でしょう。そもそも柱を立てるということは、太古以来、神さまを迎えるという意味です。大国主命おおくにぬしのみことは宮殿の建立にあたって、まず土台の石にしっかりと柱を立てました。諏訪すわ御柱祭おんばしらまつりなども、その典型です。

お茶をてるには急須きゅうすを用いますが、それはお茶の葉が茶碗に入らないよう工夫した道具です。その網の目をくぐって茶碗に入り込んだのですから、よほど縁起がいいのでしょう。その意味では、確かに幸先がいいと言わざるを得ません。つまり、幸運を引き寄せる御守という意味になったのです。

もっとも最近は、家庭から急須が消えつつあります。大人も子供も、お茶はペットボトルで飲むのが当り前になりました。この〝迷信〟も、いずれは消え失せることでしょう。私はいつも、急須を使ってお茶を点てています。その香り、その色、その味は、ペットボトルとは雲泥の差です。ぜひ、お試しを。

丙午ひのえうまの女性は亭主を食い殺す。

これはまったくの迷信です。徳川五代将軍・綱吉の頃、八百屋やおやのおしちという女性が、恋人に会いたい一心で火付け(放火)事件をおこし、いわゆる「天和てんわの大火」となりました。井原西鶴の『好色五人女』の一人ですが、そのお七が丙午だったことから、この迷信が生まれたのです。いかにも「あばれ馬」を連想したのでしょう。

そもそも十二支じゅうにしうまと動物の馬は、本来はまったく別のものです。実は丙午の女性は大らかで明るく、愛嬌あいきょうのある方が多いのです。裏表がなく、心を開いて接するので、友人も多いはずです。皆様、重ねて申します。これは、まったくの迷信ですから、絶対に誤解をなさいませんよう。

⑦カラスが鳴くと人が死ぬ。

私の祖母は葬式を予言するのが得意でした。その目安の一つが、カラスの鳴き声であったように思います。鳴き声そのものではなく、その鳴き方に暗示があったのかも知れません。朝に私が目を覚ました頃、「近いうちに葬式があるよ」と言っては、それが的中した記憶があります。

私が生まれた農村ではまだ土葬でした。お墓にお供えがあると、カラスが集まっては鳴き声を発してこれをついばみました。葬服の黒とカラスの黒が一致して、決して好まれる鳥ではありません。ただ、動物にはすぐれた予知能力があり、その声によっては、的中する可能性は高いはずです。あながち、迷信とは思いません。

山路天酬密教私塾

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