令和2年8月20日
私が子供の頃、農村の男の子はみな、川で釣りをしたものです。とはいっても、餌はミミズしかありません。ミミズばかりはいくらでもいたのです。また、男の子はどこにでも立小便をしたので、おしっこがミミズにかかることがよくありました。さあ、その時です。故意であろうが間違ってであろうが、そのおしっこがミミズにかかるや、男の子のアソコが腫れて痛み出すのです。私も何度か経験しましたので、よくわかります。これは確かなことです。
しかし、その理由がわかりません。いろいろ調べましたし、質問もしました。ある方はミミズが防御液を出すのではないかと言いましたが、たとえ子供でも、地面から男性器までの距離を考えれば納得はできません。ある方は不潔な手でおしっこをするからだと言いましたが、農村の子供はみな田畑を手伝って汚れていたのに、ミミズにおしっこをかけた時だけというのも納得できません。ある農学博士はこの質問に対して、「きわめてむすかしい」と答えています。
ミミズを干した生薬を漢方では「地龍」といい、解熱剤として大変に薬効があります。高熱を発する疫病治療などにも、使われたかも知れません。たしか韓国の歴史ドラマ『王建(ワンゴン)』の中で、兵たちが疫病にかかって士気を失い、交戦もできない状況のシーンがありました。軍医も治療法が見つからず、悩むに悩みました。ところがある夜、夢の中にその先祖が現われ、ミミズを生薬と共に煎じて服用させれば快癒するとのお告げを受けました。事実、この処方で兵たちの命が助かりました。ドラマでのストーリーとはいえ、十分にあり得るお話だと思います。
また、近年は赤ミミズに含まれる〈ルンブルクスルベルス〉という酵素が血栓を溶かす効力があるとして、宮崎医科大学の美原恒博士らによって研究が進められています。脳梗塞や心筋梗塞の救世主となり、栗本慎一郎氏がこの線溶酵素によって一命を取り留めたことでも話題になりました。これはまさに、驚異的な業績と言わざるを得ません。
それにしても、ミミズを「地龍」と呼ぶ薬名も気になります。〈龍〉は強大なパワーを持ち、権威や才能の象徴ともされます。皇帝の玉座を「龍座」とも言い、『三国志』では隠棲中の諸葛孔明を「臥龍」と呼んでいます。隠れた天才という意味でしょう。また、いまだ天に昇らぬ龍を「蟠蛇」と言い、ヘビを龍の子供とするのです。龍は肉眼では確認できませんが、ヘビやミミズは地上の生物です。つまり、こうした蛇体には、何か霊的なパワーがあると考えられて来たのです。
農村のことばかりで恐縮ですが、ヘビをいじめたり、殺したりして高熱を出した子供がよくいました。釣りをして川魚を食べても、ネズミを退治しても何ともないのに、どうしてなのでしょう。弁財天の眷属である白蛇を「宇賀神」と呼ぶように、ヘビやミミズのような蛇体には、特殊な威神力があるとしか思えません。私が浄書する霊符(護符の一種)もまた、蛇体の形をしていますし、霊符行者はウナギ(蛇体)を禁食としています。今日のお話、いかがお思いでしょうか。