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社会
令和元年6月15日
台所の隅に電動の包丁研ぎ機をおいて、マメに包丁を研いでいます。包丁の切れ味が悪いと、料理の意欲も薄れるからです。板前さんなら、なおさらのこと。毎日、砥石で包丁を研いで手入れをしているはずですし、昔は床屋さんもそうでした。農家の方なら毎日、鎌を研ぎました。
だから、刃物が切れるのは砥石のおかげだということを忘れるべきではありません。砥石はもちろん、まったくの下役、縁の下の役で、表に出ることはありません。日本刀の美しさや包丁の切れ味が称賛されても、砥石が讃えられることはありません。しかし、日本刀も包丁も砥石がなければどうすることもできません。砥石は誰にも注目されず、その産地すら知られていません。これはいったい、どうしたことでしょうか。
実は京都の亀岡に〈匠ビレッジ天然砥石館〉があり、丹波青砥等の名品が展示されています。京都は木造建築や和食文化が永く継承され、それらの道具を研ぐために、すぐれた砥石が集められたのです。観光名所もけっこうですが、こういうところが京都ならではなのです。
私たちの社会は、多くの裏方によって支えられています。自分が裏方になったり、逆に裏方に助けられて仕事をしています。いずれも必要なものです。刃物を扱う方々は、無事に仕事ができるのは、すべてこれ砥石のおかげだということを肝に銘じましょう。