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挿花
令和元年6月9日
今日も梅雨らしい一日でした。そして梅雨の花といえば紫陽花でしょう。〈あじさい〉や〈アジサイ〉より、私はこの漢字表記が好きなのです。紫陽花の〈陽〉とは光のことです。そして、おりおりの光によって色が変ずる花という意味です。
梅雨の詩情として、これほど似合う花はありません。今朝も散歩中に薄紫の紫陽花が目につき、その家のご主人より一枝をいただいて本堂に挿しました(写真)。技術などどうでもよいのですから、皆様も庭の一枝をガラス瓶にでも挿してみてください。家の中がパァーと明るくなりますよ。
万葉の時代は「集真藍」といったそうで、藍色の小花が集まった花とのお話を聞いたことがあります。今どきは藍色のほか、青・紫・紅・白などの色が多彩に競います。また、各地に〈あじさい寺〉が増えて、うれしいかぎりです。
また紫陽花について、忘れられないのは三好達治の詩「乳母車」です。
母よー
淡くかなしきもののふるなり
紫陽花色のもののふるなり
はてしなき並樹のかげを
そうそうと風のふくなり
私がはじめて魅せられた「声に出して読みたい日本語(斎藤孝氏の造語)」でした。
解釈など、無用なことです。ただ紫陽花が淡く、悲しく〝ふる〟のです。時が過ぎるのです。何と美しい詩でしょう。久しぶりに、青春を堪能しました。