令和4年7月26日
私は平成30年11月25日にあさか大師を落慶開山し、翌年正月より布教を開始しました。
ただ、その前の2年間、近くの古いマンションを仮本堂としていました。築40年という建物でしたが、そこを選んだ理由は、昔の一間(180センチ)の押入れがあったからです。その襖をはずし、赤い毛氈を引いてお大師さまをお祀りすることができました。10人も入ればいっぱいになるほどの狭さでしたが、それでも月々の行事は今と変りなく、お参りの方々といっしょに挙行していました。
ところが、私が常に悩まされたのは、真夜中にブザーで起こされることでした。多くは深夜の2時、3時頃だったでしょうか。そのブザーというのは、今時はお目にかかれない旧式のもので、いわゆる「ビィー!」と鳴り続けるアレでした。それも一回だけを、長く鳴らすのです。私は今でも、あの音の響きを忘れません。たいていは、私が眠りに就き始めた時刻です。「せっかくいい気持ちで寝ているのに誰だろう?」と思って、ドアに向って「ハーイ」と返事をしても、何の応答もありません。玄間を開けても、もちろん誰もいません。
私は始めは誰かのいたずらかと思いました。しかし、それにしては回数が多過ぎますし、ほかの居住者に聞いても、そんな経験はないといいます。そして、それは行事の前日に多いことが、だんだんとわかって来ました。つまり、あの世の人が、供養を受けるにあたってご挨拶に来たということだったのです。
このような経験は、以前に勤務していた寺でもありました。私は玄間近くの部屋に寝起きしていましたから、誰かが入ってくれば、すぐにわかりました。そこでは、玄間のブラインドが風もないのに、「カサカサ」と音を立てるのでした。時にはノックの音で気づくこともありました。これも同様に、行事日が近づいた日に多かったと思います。
ところが、あさか大師に移転してからは、こうした音はまったく消えました。その理由ははっきりとは断言できませんが、供養の位牌があるため、わざわざ挨拶をしなくても〝常にいる〟からかも知れません。挨拶は毎日しているからなのです。その仮本堂では、位牌はまだ安置していなかったのでした。
あの世の人、つまり〈霊的な人〉は間違いなく存在します。それは眼に見える姿の場合もありますし、声や音を通じて知らせて来る場合もあります。この世のものとも、あの世のものとも、どちらともいえるような、いえないような、そんな感じです。皆様、怖いお話をまだ続けますか?