令和元年5月11日
よく営業の方から、顔写真入りの名刺を渡されますね。あれは何のためかといえば、もちろん顔写真によって自分を印象づけるためでしょう。そして、その顔写真の印象によって、少しでも自分の名前を早く覚えていただくためでしょう。
人はこの世で何が一番大切なのかといえば、それはもちろん自分自身なのです。そして、その一番大切な自分の顔と名前を、少しでも早く覚えてくれた方に好意を持つのです。逆にいえば、人の顔と名前を少しでも早く覚えられる人は、多くの人から好意を持たれるのです。特に、リーダーとして人の上に立つ人は、この当たり前の事実に気づかねばなりません。
本県越生町に、入間カントリー倶楽部があり、かつて長谷川浩子さんというフロント係の方がおりました。彼女は一万人のお客様の名前を覚えていることで話題になり、『顔と名前を覚える法』という本まで出版しました。20年も前でありましたか、私はこの本を読んでいたく感動し、ぜひこの著者に直接お会いしたいと考えておりました。しかし、私はゴルフにはまったく縁がなく、そのまま長い時間が過ぎ去りました。その間、私は『一話一会』という法話集を出版して、その中で長谷川さんのことを語った一話を掲載しました。
ところが2年ほど前、たまたま越生町に用事があり、生まれて初めてのゴルフ場という未知の世界に飛び込みました。残念ながら長谷川さんはすでに退職しておりましたが、ご主人が在職しており、拙書に手紙を添えてお渡しました。そして、長谷川さんからはスグに連絡があり、やっとお会いすることができました。
長谷川さんが私に語ってくださったことは、何より大切なことはお客様に対する感謝の気持と、何が何でも覚えようという意欲だということでした。つまり、私たちはそれほどに〝何となく〟人と会っているということなのでしょう。覚える秘訣はいくつか本に書かれていましたが、お客様への思いやりと情熱こそは、いかなる秘訣をも超えた〈顔と名前を覚える法〉だったのです。いい方に出会えましたよ。