令和3年3月2日
あさか大師では毎日、毎日のお護摩で諸願成就のご祈願をしますが、先祖供養や水子供養も朝一番に修しています。特に水子供養に関しては、ホームページをご覧になった一般の方からのお問い合わせもいただきます。現代の日本において、水子供養はお寺の責務として、とても大切だと考えているからです。
しかし、かくいう私も、かつては水子供養にはあまり積極的ではありませんでした。なぜなら、自分の過去の違背や不徳に気を病み、人目を避けてこっそりと相談に来る女性や、その弱みにつけこんでは法外な布施を要求する行者や霊能者のイメージがあったからです。また、いたずらに女性の不安感や罪悪感をあおる誇大広告があることも事実です。せっかくお越しいただきながら、お断りしたこともありました。
ところで、皆様は信じがたいと思いますが、日本人の平均寿命が50歳を超えたのは昭和22年以後のことです。つまり、それほどに天寿をまっとうすることは稀であったといえるのです。流産をはじめ、夭折による短命がいかに多かったかがおわかりでしょうか。栄養の増大や医療の進化はともかく、私たちが普通に生きていることすら、極めてありがたいことであると知らねばなりません。ならば、母体に宿りながら生縁を得られなかった水子さんたちのために、供養に専念することは当然の勤めではないでしょうか。
水子さんたちは私たちのように、この世の喜怒哀楽を経験していません。天災や人災にさらされることもなく、不和や口論、詐欺や裏切りの憂き目も知りません。だから、恨みが積って〝たたり〟をなすほどのことはほとんどありません(つまり、稀にはあるのです)。ただ、自分と同じ母体に宿りながら、無事に生まれた兄弟姉妹たちをうらやましく思うことは間違いありません。この思いを取り除くことが大切なのです。
そして今日、特に青少年の不登校や引きこもり、暴行や犯罪と、水子さんの存在がまったく無関係であるはずがありません。私が水子供養をしなければと思いいたった理由は、実はここにありました。それに、水子さんたちは意外に素直です。しっかりと供養をすれば、多くは気持ちがやすらぎ、心のわだかまりも消えていきます。ましてや戒名をつけて仏門に入れさせれば、申し分がありません。「私の弟子になってしっかり修行していますよ」と、母親の方にはお話をしています。
水子供養のことでお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。ご無理をせずに続ける方法を、共に考えましょう。