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人生
令和元年5月26日
新茶がおいしい季節です。
現代は、自宅に〈急須〉や〈茶筒〉すら置かない方も多いのではないでしょうか。お茶は自動販売機や冷蔵庫のペットボトルで飲むものと思っているからです。とても残念なことで、ぜひ急須でたてたお茶を召し上がっていただきたいものです。香りの違いに、格段の差があることがわかることでしょう。
ところで、〈芽茶苦茶〉という言葉の意味がおわかりでしょうか。実は、これこそお茶の入れ方を教示したおもしろいお話があるのです。ぜひ、知っておいてください。
「お茶は三煎して味わう」という習わしがあります。特に新鮮な芽茶に熱湯を注いではなりません。一煎はややぬるめのお湯を注いで、その甘さを味わうのです。二煎はやや熱いお湯を注いで、タンニンの渋さを味わいます。渋さは甘さを超えたものであって、男も中年にならねば、渋い魅力は出ません。 最後の三煎はいよいよ熱湯を注いで、カフェインの苦さを味わいます。苦みばしったの魅力は、熟年にならねば出ません。お茶の深奥は、まさに苦さにあるのです。つまり、人生をなめ尽くした後にたどり着く味が、この苦さなのです。
この三煎の心得がないと、芽茶にいきなり熱湯を注いで、甘いも渋いも苦いもゴチャゴチャなります。これが〈芽茶苦茶〉の語源です(笑)。これはお茶の心得ばかりではなく、人生そのもののお話です。
何をするにも手順があり、それぞれに大切さがあるのです。そして、年齢と共に経験を重ね、甘いも渋いも苦いも味わってこそ、その人ならではの魅力が出るのです。
おもしろくて、しかもいいお話でしょう。人生を芽茶苦茶にしてはなりませんよ。