令和元年6月8日
高齢になれば体力が衰えます。これはやむを得ないことです。では煩悩も衰えるかというと、これがまったく逆なのです。年齢と共に、ますます制しがたいのが煩悩でありましょう。しだいに時代から取り残され、若い人のすることがいちいち気に入らないからかも知れません。
中でも、最も制しがたい煩悩は〈嫉妬〉であるといわれています。自分の成功を喜ぶのは当然ですが、他人の成功を素直に喜べないところが嫉妬なのです。嫉妬の文字は、二つながらにオンナヘンが付きます。なるほど女性は、他人の仲のよさをねたんだり、ヤキモチをやくことが多いのでしょう。
しかしながら、実は男の嫉妬はより陰険で、底知れぬ不気味さがあることをご存知でしょうか。それは男には闘争本能があり、常に競争にさらされて来たからなのです。自分の身辺によりすぐれた人物がいる時、その人物が大きな成功や栄誉に輝いた時、これをねたまぬ男はいません。口では褒めたたえても、どこかで嫉妬の感情をも燃やしているのです。ヘタをすると、その嫉妬が憎しみへと転じ、あらぬ事件に進まぬともかぎりません。一国の主なら、国を滅ぼすとさえいわれるほどです。
しかしながら、嫉妬をしていたたまれないような感情を燃やさねば、人間は何も変わりません。いたたまれないようなその気持ちをヤル気に変えれば、新たな生きがいとなるのです。大事なことは、それを上手に使うこと、上手に転ずることでしょう。嫉妬の感情に燃えた時こそは、チャンスなのだと思いなおし、いっそう励むことができるのです。
いうまでもなく、嫉妬は煩悩です。振り回されればそのまま煩悩ですが、上手に使ってこれを転じれば菩提となるのです。嫉妬を転じれば煩悩を転じ、煩悩を転じれば菩提に転じます。退屈なお話でしたか? でも、大事なことです。