コンプレックス

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人生

令和元年6月7日

 

コンプレックスは大切な才能です。なぜなら、人はコンプレックスがあるから、何とか克服しようとして努力するからです。コンプレックスがなければ悩むことがなく、悩むことがなければ何の努力もしません。

私は栃木県の農村に生まれ、「あいうえお」の五十音表記も、『むすんでひらいて』の歌も知らずに小学校に入りました。いくら農村の子供でも、それくらいは覚えて入学して来ます。そのコンプレックスに悩み、校舎の片隅で泣いていたことさえありました。それでも、「よほど勉強しなければついて行けない」と、子供心に思ったのかも知れません。特に習字の稽古は、よく励みました。後年、僧侶になってからも、毛筆で苦労したことがありません。

また、宇都宮の高校に通い始めた頃、同じようなことを経験しました。街の生徒たちは、やれシェークスピアだのトルストイだのと、よく知っていました。私はほとんど読書というものに興味ありませんでしたので、ここでもまた強烈なコンプレックスに悩みました。以来、私は本の虫となり、未だに読書欲は衰えることがありません。そして、多くの著作を成し得たのも、この時のコンプレックスがあったからなのです。私が都会に生まれて英才教育でも受けていたのなら、今頃はとんだ道楽者になっていたことでしょう(笑)。

何が幸いとなり、何が災いとなるかわからないところが、人生のおもしろさです。皆様、大いにコンプレックスを持ち、大いに悩みましょう。これによって人生の目標を立て、目標に向かって努力をしましょう。努力がイヤなら、努力のマネだけでもしましょう。そのうちに、努力が楽しめるようになります。これ、本当ですよ。どうぞ、お試しあそばせ。

山路天酬密教私塾

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