続々・荒神様はどんな神様?
令和6年7月31日
荒神様の御影(お姿)は火難除札などの中で見ることがあります。いくつかの御影がありますが、一番多いのは八面六臂(顔が八つ、腕が六本)のお姿でしょう。手にはそれぞれ宝珠・仏具・弓矢・斧などを持っておられ、いかにも怖そうな形相をしていらっしゃいます(写真)。
ところで、荒神様は広く日本国民に信仰されながら、その行法(密教の専門的な祈り方)はほとんど伝えられていません。観音様やお不動様などの行法はスグに学べますが、荒神様はなかなかその機会がないのです。
そこで私は若い頃、三人の阿闍梨(行法の師僧)を訪ねて伝授を受け、貴重な「三宝荒神法」を学びました。先日、5人の弟子僧より要請があって伝授をしましたが、大変にむずかしいものです。
貴重なこの行法を永く伝え、正しく相承されることを願ってやみません。ついでながら、荒神様のブログを三度続けました。そうすると、どうしたことか、荒神様の逸話や資料が次々に集まりました。これは偶然なのか、それとも、もしかして・・・・です。
続・荒神様はどんな神様?
令和6年7月27日
紛失や盗難の原因は、家内での荒神様への不敬(立腹・悪口・口論・不浄)が原因です。「そんなバカな!」と思うでしょうが、これは本当のことです。信じる信じないにかかわらず、荒神様はそこに土地があり、火や水を使う以上、どの家にも必ずいらっしゃるからです。
そこで紛失・盗難にあった場合の「失物発見法」を伝授しましょう。これは私が、あさか大師の皆様にお話していることで、どれほど多くの霊験があったかは計り知れません。
①まず、ガス台やIHを清掃して火をつけ、仏壇のお線香を立てます(写真・お線香がない場合は省略してもけっこうです)。
②次に荒神様に、よくおわびをします。「ご不敬がありましたらお許しください。大切な〇〇を紛失しました。一刻も早く見つかるよう、お願いいたします」 と、声に出して念じます。
③次に荒神様の真言「オン ケンバヤケンバヤ ソワカ」を二十一遍お唱えします。
これで家の中での失物なら、たいていはスグに見つかります。外の場合や盗難は、三日~七日続けてください。外で財布を紛失した場合は、現金はなくなっていても財布自体やカードが戻ってくる場合が多いようです。見つかったら、荒神様への御礼をお忘れなく。ぜひお試しください。
荒神様はどんな神様?
令和6年7月25日
あさか大師には、御守と共に〈火伏札〉が陳列されています。いわゆる「台所の神様」「荒神様」の御札で、火難除のために皆様がお求めになります。お寺でも台所のガス台近くにお祀りしています(写真)。
荒神さまは「三宝荒神」と呼ばれますが、どんな神様なのか、実ははっきりしていません。日本古来の神様と真言密教の明王様が習合した尊格だとしかいいようがありません。お像や御影(絵)を見ると、怖い忿怒の形相をしています。一説にはお不動様の化身、あるいは文殊様や聖天様の化身などともいわれます。
また、〈土・火・水〉の三要素を「三宝」として、荒神様の本体ともいいます。人間はこの三要素がなくては生きていくことができません。そして、これらの三要素が荒れ狂う時、私たちは多大な災難を呼ぶことになるのです。
特に怖いのは地震でしょう。荒神様の真言は「オン ケンバヤケンバヤ ソワカ」とお唱えしますが、その「ケンバ」とは地震のことという説があります。そして、人は土をもってカマドを作り、水を用いて煮炊きをしてきました。「ケンバ」をカマドとする別説もあり、カマド(台所)の神様はこうして崇拝されてきたのです。
現代の台所にも、荒神様は必ずいらっしゃいます。特に不浄を嫌うとされますので、ガス台やIHは清潔にせねばなりません。また、その近くで腹をたてたり、悪口をいってはなりません。これを犯すと災難を呼ぶからです。ほんとうですよ。
求道僧への伝授会
令和6年6月28日
昨日、相模原市の蓮乗院にて、私の近著『尊勝仏頂法・宝篋印経法』(青山社)の伝授会がありました(写真・中央奥が私)。長いコロナ禍の中で伝授会がすべて中止となり、六年ぶりに公的な会所に臨んだことになります。多くの求道僧が集まり、熱心にご視聴をいただきました。
またご住職所蔵の多くのマンダラ絵図が公開され、まるで三千世界の諸仏諸尊に囲まれたような伝授会でありました。遠くは北海道や関西からも参集され、ご挨拶やご質問を賜りました。
求道僧の集まりとは、このようなものでありましょう。ご自坊に帰りまして、さらなるご精進を遂げられますよう念じてやみません。
最勝の陀羅尼とは
令和6年5月23日
真言密教では仏頂尊勝陀羅尼・宝篋印陀羅尼・阿弥陀陀羅尼を「三陀羅尼」として尊重し、毎日の勤行でお唱えします。この中で、三番目の阿弥陀さまに関しては皆様にもよく知られ、お寺の本尊としてもお祀りされています。ところが仏頂尊となると、どういう仏さまなのかよくわかりません。またお寺で宝篋印塔という石塔をよく見かけるものの、説明されることはほとんどありません(下写真)。
そこで私は、このたび『尊勝仏頂法・宝篋印経法』という行法次第(供養の方法)を刊行し、ご住職さま方に仏頂尊や宝篋印塔への関心を深めていただきたいと考えました(下写真・青山社刊)。
仏頂尊とは仏さまの頭上に盛り上がった仏智(肉髻といいます)を、尊格として象徴した仏さまです。よく不機嫌な顔つきを「仏頂面」などといいますが、とんでもないことです。仏さまの智恵が最も集まっているので「尊勝」とお呼びするのです。
また宝篋印塔という石塔も五輪塔(光明真言の塔)と並んで、その功徳ははかり知れません。そのことは『宝篋印陀羅尼経』に明記されています。つまり、「三陀羅尼」は光明真言と共に、先祖供養への最勝の陀羅尼だといえるのです。
私のささやかな刊行によって、ご住職さま方が三陀羅尼への意欲をさらに深めていただくことを願ってやみません。
地鎮鎮壇法の実修
令和6年5月16日
昨日、古河市の大行院様(建立中)の依頼により、新しいお寺のための地鎮鎮壇法を修しました(写真・左が筆者)。
真言密教のお寺を建立する場合は、必ず地鎮鎮壇法を修し、大壇や護摩壇の下に地天(土地中心の神様)への宝瓶と五色玉を、また八方天(八方の神様)への輪宝・独鈷杵という法具を埋め、五穀粥を献じなければなりません。ただ、仏具店で簡単に買える法具ではありませんし、修法を伝承した阿闍梨(真言密教の導師)も少なくなりました。
昨日は私が導師を、法友が正鎮師(副導師)を、あさか大師の弟子僧2名が承仕(役僧)となって、無事に奉修を果しました。一同が貴重な体験をさせていただきましたことに御礼を申し上げますと共に、大行院様の寺門興隆をお祈りいたします。
仏さまの文字
令和6年4月15日
今月の6日・7日、お護摩の前に弟子僧が集まり、梵字の勉強会をいたしました(写真は7日)。
真言密教では自然界はすべて、仏さまの文字(説法)として解釈します。川の流れ、風の音、木の葉の一枚にいたるまで、すべてが仏さまの教えであるとするのがお大師さまの教えです。そして、その仏さまの文字で最も大切なのが梵字です。梵字は本来、得度を受けて僧侶となり、正しく伝授を受けねば学ぶことはできません。特に筆法や筆順など、厳密な決まりがあります。
よく、道路わきの石材店などが展示している石塔には、とんでもない間違いを散見することがあります。また仏具店に依頼して完成した位牌にも、いささか問題な点がないともかぎりません。僧侶の皆様には、ぜひ正しい梵字を習得していただきたいと思います。お札や塔婆を書くことは、仏さまそのものを書くことであることを自覚すべきだからです。
ついでながら、私は自分の著書の梵字は、タイトルと共に自分で浄書してきました。仏さまの著書を刊行するのですから、当然のことです。お大師さまに笑われぬよう、これからも精進せねばなりません。
弘法大師御影の秘密
令和6年3月24日
20日の正御影供では毎年、お大師さまの御影(お姿の絵)に描かれた念珠・水瓶・木履(木製の靴)の三点を仙菓のお供えと共に荘厳しています(写真上)。これは私の著書『弘法大師御影の秘密』(青山社刊・写真下)を上梓するにあたって、こうした法具を復元したことに由来します。
真言宗の僧侶は何をするにも、まずはお大師さまに礼拝します。しかし、その御影がどんな意味をなすのか、どんなご誓願をもってあのように残されたのか、まったく教えられていません。私はその一つひとつについて、自分の考えを発表しました。これはお大師さまに結縁した、私の人生の使命であると考えたのです。
これらの法具は、残念ながら高野山にも残っていません。江戸時代の目録には書かれていますが、御影堂(お大師さま居住の場所)にも霊宝館(宝物館)にも残っていません。これはとても残念なことです。
念珠は赤いので、よく瑪瑙ではないかといわれますが、中糸が透いて見える以上、これは琥珀に間違いありません。また、木履は福山の〈日本はきもの博物館〉にも所蔵されていないほど貴重なものです。興味のある方は、毎年3月21日(20日)の正御影供にご参詣ください。
お大師さまについての本は数かぎりがありませんが、この御影について書かれた類例はきわめて希少です。私の著書にもご縁をいただけますれば、幸甚のかぎりであります。
孔雀明王の秘法
令和6年2月27日
本日、金沢より真言宗僧侶の方がお越しになり、3名の方に〈孔雀経法〉を伝授しました。〈孔雀経法〉とは孔雀明王(写真)への祈願法で、真言密教〈三箇大法〉の一つであり、秘法中の秘法とされるものです。その秘法を修すれば絶大な法験を生むがゆえ、特に国家的な危機を救う祈りとして、ひそかに修されてきました。
私がなぜこのような秘法を伝授したのかと申しますと、震災はもちろんのこと、戦争・コロナ感染が未だに絶えないからです。そして、私自身も毎日の祈りに、この孔雀明王の真言を加えているからです。
孔雀は毒虫を食すので、それが人間の三毒(貪瞋痴)を食する鳥としてたたえられました。また、その名を「救邪苦」とも表記し、邪悪な苦しみを救う深意が込められています。「孔雀明王」とは呼ばれるものの、不動明王などの忿怒の〈明王〉ではなく、「明(真言)の威力にすぐれた王」の意味であることも知らねばなりません。ご覧のとおり、尊顔はやさしい菩薩形です。
私も心ある有縁の僧侶の方には、今後もこの秘法を伝授していきたいと思っています。また能登半島の被災地が、一日も早く復興しますことを念じてやみません。
日本史最大の巨星
令和5年10月19日
このたび、お大師さまのご尊号とご宝号の立札を設置しました(写真)。
あさか大師のご本尊さまは「厄よけ弘法大師」です。初めてお越しになった方には、尊前にご案内してそのように説明しています。そろそろ来年の厄除一覧表を公開しますが、初詣の折にはこの立札が衆目を集めると思います。
それから、お大師さまのご宝号は「南無大師遍照金剛」とお唱えします。〈遍照金剛〉とは真言密教の教主・大日如来を意味しますので、私たちはお大師さまを大日如来そのものとして礼拝しています。つまり、「南無大日如来」とはお唱えせず、「南無大師遍照金剛」とお唱えするという意味です。
このことはとても大切なことで、真言宗僧侶の方でも意外に理解されていません。お大師さまの宝号がすなわち大日如来であるという真実を、私は広く宣揚したいと思っています。お大師さまは今日、世界中から注目されていますが、まさに遍照(あまねく照らす)そのものでありましょう。
お大師さまは日本史における、最大の巨星です。戦国武将や明治維新の英雄より、はるかに大きな文化的業績を残しました。そして、真言密教の曼荼羅の教えはますます共感を呼んでいます。このご宝号が、あらゆる国々の人々からお唱えされる日を念じてやみません。