最も身近な宇宙とは

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真言密教

令和5年5月26日

 

真言密教は人体を宇宙としてとらえます。これを説明するために、興教大師こうぎょうだいし(新義真言宗開祖)はこれを五輪塔ごりんのとうによって表現しました(写真)。

五輪とは地・水・火・風・空の自然界を、それぞれ四角・円・三角・半円・団の形によって説明したものです。大地は堅い四角で、水玉は丸で、立ち上る火は三角で、舞い上がる竜巻(風)は半円で、雲(空)は団形で表示しました。さらに、これを人体に配当すると、瞑想で座った足の形は四角い大地です。おなかと両腕は円となります。肩の形は三角で、顔は半円、頭は丸です。つまり、私たちの体はこの自然界の縮図であり、宇宙そのものなのです。

私たちはお母さんの体内から生まれましたが、このような姿を誰が創ったというわけではありません。世の中には不思議な出来ごとがあるものですが、最も身近なところに、こんな不思議があったのです。いうなれば、仏さまがお創りになったとしかいいようがないのです。

もう一つお話をしますと、かつて韓国の歴史ドラマに『ホ・ジュン』という名作がありました。主人公の名が許浚ほじゅんで、16世紀に活躍した漢方医学者です(写真)。ドラマは彼の生涯の偉業である医学書『東医宝鑑とういほうかん』を完成させるまでのストーリーで、私は長編のビデオでこれを見ました。『東医宝鑑』はユネスコの世界記録遺産にも登録され、韓医大学では今でもテキストとして学ばれているほどの古典的な名著です。

ところがストーリーの最後、まさに『東医宝鑑』が完成する場面で、すばらしい名言が放映されました。私はこれを夢中になってメモを取りましたが、その走り書きが残っています。

「人の頭が丸いのは天に似て、足が四角いのは地に似る。天に四季があるように、人には四肢しし(両手足)がある。天に五行ごぎょう(木・火・土・金・水)があるように、人には五臓ごぞう(心・肝・脾・肺・腎)がある。天に六極ろっきょく(疾・憂・貧・悪・弱)があるように、人には六腑ろっぷ(大腸・小腸・胆・胃・三焦さんしょう・膀胱)がある」

これもまた、人体の宇宙を説明するに、かんにしてようを得ています。私たちは最も身近な宇宙が自分であることを知らねばなりません。また、これがお大師さまの教えでもあることを覚えておいてください。人体とはかくも偉大なものなのです。

山路天酬密教私塾

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