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挿花
令和3年11月27日
先日お話をしました東大寺八角灯籠の音声菩薩拓影の前に、サンキライ(山帰来)を飾りました(写真)。
植物学ではサルトリイバラといい、トゲのある枝に猿も引っかかることにちなんだと聞いています。漢方薬としても用いられ、病気や高齢で山に捨てられても、これを飲むと元気になって帰って来たゆえに「山帰来」と。花言葉の「不屈の精神」も、さすがだと思います。節ごとに屈折し、茎に鋭いトゲがあって生けにくく、お花の先生も悩むことでしょう。
山野の日当たりのよい所に群生しますが、葉の付け根に二本の巻きひげがあり、これで他の植物に巻きついて伸びていきます。とにかく強靭な花材です。やさしい菩薩の、あの強靭な誓願にはふさわしいと思いました。
花入れは平安時代の瓦製経筒で、写経を巻いて中に入れ、蓋で封じ、土中に埋葬しました。ただの筒なのに、花にもよく似合います。以前は蓮が咲くと、いつもこの経筒に生けたものです。いかがでしょうか。