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仏教
令和元年5月23日
人は「いいかげん」に生きることが大切です。
いや、決してふざけているのではありません。いいかげんとは〝よい加減〟です。〝ほどよい加減〟なのです。実は、これこそが仏教の根本命題である〈中道〉の教えそのものなのです。どっちつかずという意味の中道ではありません。ほどよい加減は、一つしかないのです。
たとえば夏目漱石の『草枕』に、「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ」という名言があります。あまりに智恵に走ると、角が立って人を傷つけます。情におぼれ過ぎると、世の中を渡れません。だからといって、自分の意地ばかりを通せば、まわりの人に迷惑をかけましょう。
これでは余裕がありません。やすらぎも楽しみも、ユーモアも笑いもありません。少しは肩の力をぬいて、バランスをとりましょう。しかし、そのバランスとは、人によって異なるのです。そこに、よい加減があるのです。その、よい加減こそが「いいかげん」に生きる、中道なのです。
ストレスに弱い人もいれば、ストレスという重圧があった方がよい人もいるのです。せっかちに進む人もいれば、のんびり構える人もいます。仕事に突っ走る人もいれば、きちんと休日を楽しむ人もいます。いやはや、生きるとはこうもむずかしい、とは思わぬことです。
考えても、考え過ぎないことです。悩んでも、悩み過ぎないことです。いいかげんに、よい加減に考えれば、人生はどうにかなるのです。そうなのですよ。