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社会
令和元年5月22日
また、『徒然草』の名言をご紹介しましょう。
第73段に「世に語り伝うること、まことはあいなきにや、多くはみな虚言なり」とあります。世の中に語り伝わることは、なかなか真実はないものだ。多くはみなウソの話ばかりである、といった意味になります。そして、そのウソの話の筆頭こそは〈うわさ話〉といえましょう。
お寺の中でも、よくあることです。私がちょっと元気のない顔でもしていると、誰かが「顔色が悪かったよ」と話すと、次の人は「病気じゃないの」となるのです。次の人は「かなり重症らしい」、次の人は「入院したらしい」、次はとうとう「もう、あぶないらしい」となって(笑)、私はいつの間にか殺されることになるのです(笑)。いや、これはもちろん冗談です。
冗談ですが、しかし、私たちは人にモノを伝える時、たいていは少しずつ誇張して話していることがわかりますでしょうか。「多くはみな虚言なり」とは、このことです。自分の眼と耳で確認したこと以外は、よくよく気をつけねばなりません。
これが笑い話で済めば、まだいいのです。しかし、うわさ話が大きな誤解や、偏見、時としてとんでもない悲劇を生むことすらあることを知りましょう。言葉の刃物を「舌刀」とまで言うのです。こわい話ですよ。うわさ話は凶器にもなるのですよ。自重、自重。