稲の〈妻〉とは?

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自然

令和元年8月17日

 

稲が実りつつ、たわわながもたれ始めました。この時期は稲が実ると共に、かみなりとどろきを聞くことも多いはずです。

ところで、皆様は雷が多い年は稲がよく実り、豊作であるという説をご存知でしょうか。これは昔から言われていることで、藤沢周平の『三屋清左衛門みつやせいざえもん残日録ざんにちろく』にも主人公が幼い頃、母からそのことを言い聞かされる場面があったことを記憶しています。しかし、その理由は科学者でさえ容易には解明できませんでした。

松江市の高校生・池田圭介君はこのことに興味を持ち、学校にあった放電装置で稲妻と同様の状況を作り出し、カイワレダイコンの成長を調べました。そして、50秒間を放電して育てた種子は、放電しなかった種子に比べると約2倍も成長が早いことを確認したのです。さらに、用いる水に対しても同じ実験をしたところ、結果には何の違いもありませんでした。つまり、放電によって水の窒素ちっそ量が1.5倍になることを発見したのです。彼はこのことを〈科学シンポジュウム〉で発表し、最優秀賞に輝きました。雷によって稲妻が放電する時は、田の水の窒素量が増えて稲の生長が早まり、豊作となるのはこのような理由からなのです。

ところで、〝稲妻〟を稲の〈妻〉と書くのも、奇妙なお話です。実は、古代にあっては夫婦や恋人どうしが互いを呼び合う場合、男女に関わりなく〈妻〉も〈夫〉も共に「つま」と言ったからなのです。稲妻の放電は〈妻〉より〈夫〉でしょう。だから、稲妻は稲に活力を与えるつまであり、その「稲夫いなつま」が「稲妻いなづま」と書かれるようになったのです。

あの怖い雷にも、こんな働きがあることを知りましょう。そして、自然にはムダなものがないことを知りましょう。

山路天酬密教私塾

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