令和3年9月21日
今夜は中秋名月で、しかもお大師さまご縁日という特別な日です。つまり、旧暦8月15日の夜に当たり、これを「十五夜」と呼ぶわけです。昨夜は一点の雲もない〈待宵の月〉でしたが、今夜は雲が多く、多分に隠れるかも知れません。ご縁日のお護摩を修してより、何となく落ち着かず、空模様を気にしていました。実は今夜の雲を予測して、明け方近くに写真を撮っておいたのです。ほとんど満月ですが、わずかな欠けを感じるかも知れません(写真)。
せっかくですので、日本人なら知っておきたい〈月待ち言葉〉をお伝えしましょう。
先にお話しましたが、十五夜の前日、つまり14日の夜を「待宵」と言います。文字どおり15日の夜を待つ宵ですが、十五夜に雨が降りそうなら、晴れたこの日のうちにお月見をしておこうという意味も含まれています。ついでですが、竹久夢二作詞、多 忠亮作曲の抒情歌『宵待草』は夢二の造語で、正しくは「マツヨイグサ」と呼びます。しかし、恋人を待つ心境としては、「ヨイマチグサ」の方が詩情に合っているのでしょう。詩人はこうして、自分の造語を生み出すのです。
また、16日の夜を「十六夜」、17日の夜を「立待」18日の夜を「居待」と言います。もう、このへんになると、満月からは欠けますが、満月の名残を楽しむ余韻が日本人らしいところです。そして、「十三夜」も忘れてはなりません。旧暦9月13日の夜で、十五夜に並ぶ名月の美しさを楽しめます。十五夜は中国から伝わりましたが、十三夜は日本独特の〈未完の美意識〉を象徴しています。今年は10月18日なので、忘れずにいてください。
毎月1日を「ついたち」と呼ぶのは、次の月が始まる、つまり「月が立つ(始まる)」の意味からです。また30日を「つごもり」と呼ぶのは、「月隠もり(かくれる)」から転じた言葉です。
これらは、お大師さまがご在世の平安時代から使われてきました。お大師さまと親交の深かった嵯峨天皇さまは月見を好まれましたから、お二人で名月を楽しんだに違いありません。