令和2年4月14日
ベテランドライバーとはどういう人をいうのでしょう。スピードに強い人でしょうか? 割り込みのうまい人でしょうか? 答えはもちろんノーです。
では、どういう人をベテランドライバーというのか、私の考えを申し上げるなら車に対する「恐れ」を知っている人なのです。車というものの機能も便利さも、また楽しさも知ったうえで、同時にその怖さも知っている人だと思うのです。
たとえば、信号のない狭い道路から大通りへ出る場合など、ベテランほど慎重です。減速して慎重に進み、一時停止をなし、窓を開けて左右を確認します。歩行者はもちろん、自転車やオートバイの通行も見逃しません。事故は一瞬のスキから生じることを知っているからです。トラックであれば荷物の積み方、荷台のシートやロープの結びを何度も確認します。走行中の揺れはもちろん、風圧による荷物の落下は予想外であることを知っているからです。つまり、ベテランほど運転に対して注意深いのです。それはあらゆる状況において、車に対する「恐れ」を自覚しているからだといえましょう。
このことは車の運転ばかりに限りません。何ごとでも、ベテランといわれる人ほど注意深く、また十分なチェックを怠りません。なぜなら、取りも直さず「恐れ」を知っているからであり、それが実力の証明でもあるからです。
一般に「恐れ」といえば、わけもなく怖くなって、足がすくんでしまうといった場合をいいます。しかし、問題やトラブルを前もって予測していだく「恐れ」があることも知らねばなりません。そして、これこそはその道に通達している能力ともいえるのです。
だから、何か気になることがあり、不安が生じるなら、物ごとは思いとどまるべきなのです。失敗する危険性があるなら、やめておいた方が賢明だということです。もちろん、それでもやらねばならない場合もありましょう。しかし、好ましい結果にはならないことが多いはずです。
うまくいく時は、うまく進むのです。必要な人や物が集まり、情報も多く、段取りがスムーズに運ぶのです。だから、少しでも「恐れ」を感じるなら、それを〝天の声〟と思うことです。「恐れ」を知って慎重になる能力こそは、成功への原動力なのです。