令和2年10月23日
国民の年間所得を出す場合、最近は平均値ではなく〈中央値〉が用いられています。平均値だと一部の高額所得者が加わり、一気に数字が跳ね上がります。すると、一般の国民には実感のわかない結果となります。そこで、真ん中の二つを足してこれを割る中央値が重んじられるようになりました。
昨年の年間所得の中央値を、年齢もトータルして調べますと、男性が356万円、女性が272万円でした。もちろん年齢別に比較すると、さらに別の統計が浮上して来ます。この中央値を見て、皆様にはそれぞれ一喜一憂の感想があるはずです。そこで、私が普段から考えている一つの教訓をお話しましょう。
サラリーマンの男性で、年間所得が中央値と同じ356万円の方がいるとします。しかし、この男性を会社が雇用する場合、給料やボーナスのほかに交通費・接待費・事務費・光熱費などで5割増しの経費がかかるのです。つまり1.5を掛けて、年間534万円の給料を支払うという計算になります。これは私の意見ではなく、経営学での常識なのです。この数字が何を意味するか、わかりますでしょうか。
昨年、日本での年間平均労働時間は1680時間でした。534万円をこの数字で割ると、一時間に3000円を超えます。つまり、この男性一人を雇うため、会社は一時間に3000円以上の経費をかけねばならないということになるのです。はたして、この男性は一時間に3000円以上の利益を、会社にもたらしているでしょうか。仮に一日8時間労働とするなら、2万4千円です。この男性が一日働いて、2万4千円以上の利益をもたらさず、ただ言われた仕事をしているだけだとしたら、もはや会社には用のない人物と見られても仕方がないのです。
会社の文句を言う前に、自分が何を与えているか、どんな利益をもたらしているかを考えねばなりません。世の中で働くということは、それだけの義務と責任があるのです。この教訓、お役に立ちますか。