令和元年11月12日
私はかなり手紙をいただきますし、自分でもマメに書くほうです。何もかもメールで済ませる方がいますが、重要な要件はやはり手紙でこそ誠意が伝わるものです。
手紙は慣れれば苦もなく書けますが、現代人の多くは不得手なようです。しかし、手紙には差出人の教養が赤裸々に出ることは覚悟せねばなりません。特に公用文に誤りがあれば、役所や会社の信用まで落としてしまいます。
手紙の関して、気になることを一つだけお話しましょう。
それは、受取人が誰であれ、「前略」で書き出す方があまりにも多いということです。時候や冒頭の挨拶が面倒なのはわかりますが、目上や未知の人に対して「前略」は失礼です。つまり、社長室にノックもしないで入るようなもので、常識を知らないと判断されてしまします。「前略」はあくまで、親しい者どうしと自戒し、一般的な「拝啓」と「敬具」を礼儀と心得ましょう。
『手紙の書き方』等の本がなくとも、今はネットで検索すれば、月ごとの時候の挨拶が出ています。それすら面倒な方は、「拝啓 時下ご清栄のこととお慶び申し上げます」などと書き出せば充分です。
お大師さまは手紙の達人でいらっしゃいました。常に相手の健康や生活を気づかい、細かい配慮をなさっておられました。いや、偉人とされる方は、みな同じです。たとえ豪放磊落に見えても、細心誠意を重ねるものです。
ちなみに私は、手紙はほとんどパソコンで書き、相手の名前はポイントを上げて大きく入れます。ただし、文末の署名と封筒の宛名は毛筆で揮毫しています。すべてパソコンというのも、味気なさは否めません。
メールの時代だからこそ、手紙はうれしいものです。万年筆なども、人気が高まっていると聞きました。ぜひ、手紙の書き方に慣れていただきたいものです。お人柄が伝わりますよ。