令和2年3月19日
中国・北宋時代の文人である蘇洵(唐宋八大家の一人で、かの蘇東坡の父)が、「功の成るは、成るの日に成るにあらず」という名言を残しています。成功とは突然に現れるのではなく、その日までに積み重ねた努力の上に成り立っているという意味です。つまり志をいだき、志を貫き、その努力を重ねなければ、成功することはないということなのでしょう。
では、志とは何でしょうか。大きな志とはいえなくても、私たちは健康でありたい、習いごとを上達したい、この仕事を成功させたいほどの希望はありましょう。そうした希望も、志のひとつです。しかし、それを成し遂げるには努力が必要なことは申すまでもありません。何ごとでも、それに費やした日々の努力がなければ、成功することはないのです。
このことは、偉人を見ても同じです。私たちはとかく偉人の業績にばかりを注目しますが、それまでに費やした努力は並のものではありません。偉人はたいてい、不幸な子供時代を送っています。そして不運な青春時代を過ごしています。それでも、こうした人生の苦難をバネにしてこそ、大きな成功を手にしているのです。運命とは皮肉なもので、その偉人の人生にかえって苦難を与えているようにさえ思えることもあります。
たとえば、松下幸之助(現・パナソニックの創始者)は成功した理由を、「貧乏であったこと、病弱であったこと、学歴がなかったこと」としています。苦難を乗り越える智恵と力、前向きに取り込む勇気と情熱、協力してくれる家族や友人、そして何よりも、汲めども尽きない大きな志を見のがしてはなりません。歴史上の偉人はもちろん、戦後の日本を支えた五島慶太・堤康二郎・本田宗一郎・盛田昭夫・井深大なども、みな同じです。私たちはこうした偉人にはるか及ばずとも、小さな志を成し遂げるにはその努力が必要なのです。
「乗り越えられない苦難は与えられない」という言葉を、聞いたことがあります。皆様にも苦難がありましょう。しかしそれは、皆様が背負った人生の宿題なのです。宿題を果たさねば次には進めません。宿題はまた、天命とも呼ばれます。そのことを肝に銘じましょう。そして、勇気をもってそれを乗り越えましょう。乗り越えられない苦難は与えられないのだ、と。そして功の成るは、成るの日に成るにあらず、と。