「調子がいい」とは

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健康

令和3年9月27日

 

「健康は血液で決まる」「人は血管から老いる」などと言いますが、その血液の云々うんぬんを決めるのは大小の腸と、「肝腎かんじん(心)かなめ」の肝臓・腎臓だと私は思っています。もちろん、人の内臓器官に何一つムダなものがあるはずはありません。それでも、腸の働きは特に重要です。なぜなら、私は「調子ちょうしがいい」とは、「腸の調子がいい」ことだとさえ考えているからです。「肝腎要」については以前にもお話をしましたし、法話集『一話一会 第2集』にも掲載しました。ここでは腸について、私なりの考えをお話をしましょう。

腸について、多くの人は食べ物の消化吸収や排泄の器官ぐらいとしか知っていません。ところが、これが大間違いなのです。実は腸こそは「第二の脳」とさえ呼ばれるからです。この定義はアメリカのコロンビア大学医学部教授のマイケル・D・ガ―ション博士が、1999年に刊行した著書『セカンド・ブレイン』に由来します。博士は腸は非常に賢く、豊かな感情を持っている、と発表しました。この衝撃的しょうげきてきな発表はまたたく間に普及し、今や重要な研究課題となりました。

腸が感情を持っていると聞くと、奇妙な感じを受けることでしょう。しかし、腸内には数億という膨大ぼうだいな神経細胞のネットワークが機能し、脳の指令を受けずに独立して働いているというのです。人が脳死にいたれば、続いて心肺停止となりますが、腸ばかりは正常に機能します。つまり、心臓は脳の支配下にありますが、腸は独立し続けるのです。これが「第二の脳」と呼ばれる由縁なのです。

腸の基本的な働きは、もちろん消化吸収と排泄です。しかしそのほかにも、自律神経と深く関わりつつ、病気を未然に防ぐ免疫組織であることがわかってきました。また、消化器官全体に張り巡らされた毛細血管全体を統括とうかつし、人の健康状態を維持管理しています。つまり、危険なものを見逃さず、消化吸収してよいかどうか、消化するにはどんな酵素が必要かを瞬時に判断するのです。まるで、あらゆる物質のデータを備えた高速コンピューターではありませんか。

そもそも、地球上に最初に誕生した生物には、脳などありませんでした。臓器と呼べるのは腸だけだったのです。つまり、食べて生きるという生命活動の根源は腸から始まったといえるのです。たとえば、田や沼に棲むヒドラという1センチほどの生物がいます。水草に付着してミジンコなどを食べて生息しています。脳はなく筒状の先端に口と触手がありますが、あとは腸だけの生物です。ほかの臓器はここから進化したものに過ぎません。これが生物の最も根源的な姿なのです。

始めに腸あり。腸は脳なり。腸こそは「第2の脳」どころか、「第1の脳」なのです。私たちの今の脳は、後に付属した臓器といっても過言ではありません。このお話、次回また。

山路天酬密教私塾

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