壺阪寺の鳳凰文拓本
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古美術
令和元年10月19日
私は十代の頃から古美術が好きでした。
特に會津八一の影響からか、古代瓦や拓本に大きな魅力を感じてきました。これらは、著名人の絵画や筆跡、また箱書き入りの茶道具などとは異なり、高校生のアルバイトでも買えるくらいのものでした。しかし、現代では寺院跡より発掘された古代瓦は博物館に入り、奈良の仏教美術もレプリカ(模造品)でしか拓本を採ることができません。したがって、私が所蔵する程度のものも、今となっては貴重な資料になるかも知れません。
そこで、あさか大師本堂にある床の間に拓本を飾り、その前に野の花を挿してお供えとするのを日課のようにしています。今日は奈良。壷阪寺(南法華寺)の鳳凰文〈塼〉の拓本です(写真)。塼とは本堂の壁面を飾ったレリーフと思ってください。
拓本は肉眼では見えない細やかな線を鮮やかに浮き出し、原物とは異なる別世界を生み出します。今、まさに飛び立たんとする鳳凰の姿を美しく表現し、力強いパワーに満ちています。高価な絵画より、むしろ私は拓本の方が好きなのです。野の花にもよく合います。
壷阪寺はお里と沢市の『壺阪霊験記』で有名で、眼病や夫婦円満の観音さまが安置されています。二十代によく大峰山に入峰しましたが、明日香村から吉野に向かう時、たびたび立ち寄りました。なつかしい思い出です。