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挿花
令和元年8月9日
炎天が続く中、とても涼しげな花をいただきました。
和名をフサフジウツギ(房藤空木)といい、西洋ではブッドレアの名が付けられています。イギリスの植物学者で、牧師でもあったバドルにちなんだそうです。正面からは見えにくいと思いますが(写真)、藤の花のように長く、はじめはトラノオ(虎の尾)かと思ったほどでした。白花以外では紅・紅紫・濃紅紫などがあります。
私は花については何の技術もないので、ただ一輪ばかりをそのまま挿しました。それでも、花の本はかなり買い込みましたし、家元茶花の本もどれほど読んだかわかりません。しかし、生け花ばかりはどうしても馴染めず、やはり〝素人の花〟こそ性に合っているようです。
素人といえば旅館や料理店、また古美術店には大変に上手な方がいます。お客様をおもてなしするその配慮に心引かれ、私もそれを見習っています。大事なことは〝さりげなく〟挿すことで、技術ばかりが目立つと、嫌味たらしく感じます。
私がどうして生け花に馴染めないかというと、いかにも「どうだ!」とばかりに、見栄を張るからです。無理にも枝をねじ曲げ、息が出来ぬほど挿し込み、まるで上座から見下すような構えです。目立つための技術としか思えません。
かつて、宗門の新聞に連載した花の写真とエッセイは、半分は『邑庵花暦』(創樹社美術出版)と題して刊行しましたが、残りの半分がまだ眠ったままなのです。いつかは皆様の目に止まるよう、努力しましょう。はたして、花は野にあるように、挿せましたでしょうか。