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あさか大師
平成31年3月29日
玄間脇に常滑焼(愛知県)の大壺があり、傘立てに使っております。
新寺建立のお祝いに、親しい骨董屋さんから贈られたものでございます。これでも室町時代のもので、釉薬もみごとながら、登り窯の炎熱の中で飛び散った〝引っ付き〟も大きな魅力でございます。参詣の皆様はもちろん、そんなことはわかりませんので、「ちょうどいい」と思って、傘を立てていきます。
しかし常滑焼は、そのあまりの無骨さが数寄者に嫌われ、茶道具にはなり得なかったのでございます。瀬戸や信楽などと並ぶ六古窯(日本を代表する六大古窯)でありながら、茶室の雰囲気に合わなかったのでございましょう。それは藩主の命運さえ決めるほどの〝事件〟であったのでございます。
それでも私などは田舎者のせいか、この無骨さ(つまり泥臭さ)がとても好きで、こうした大壺の欠片さえ、花器に用いたほどでございました。泥臭いこのような大壺に枝葉を挿すと、とてもよく合うのでございます。春のレンギョウや秋のモミジもよく合いますのでございます。
今日も三人ほどの方が、この大壺に傘を立てました。室町時代のものとは、誰にも話してはおりません。
住職の楽しみは、こんなところにもあるのでございますよ。