令和4年8月20日
健康法は何ですかと聞かれた場合、私はいつも「仕事です」と答えることにしています。実際、本当にそう思っているのですから、やむを得ません。
僧侶の仕事は、まさに健康法そのものです。第一に読経をします。最近は〈声出し健康法〉としてカラオケやコーラス、詩吟や朗読をすすめる医師が増えました。なぜなら、声の大きい人は元気だからです。これは間違いありません。皆様も、まわりの人を見てください。声の大きい人はよく食べて、よく働き、よく眠ります。風邪を引いても、すぐに回復します。
私の場合は特に、一般の僧侶より高い声を張り上げ、早いテンポで読経をします。眠くなるような読経はできません。すると、自然に腹式呼吸となり、新しい気力を体内に送ることができます。ここが大切なところで、人は不安やイライラがつのる時ほど、実は呼吸が浅くなるのです。深呼吸をすると、落ち着きを取りもどすことでもわかりましょう。読経はさらに、声帯を振るわせて代謝を上げますから、健康法にならぬはずがありません。読経をすると髪や爪の伸びが早まるのはこのためです。もちろん、ストレスの発散にもなります。
次に大汗をかいて太鼓を打ちますので、ジムに通わずとも筋トレになります。また法螺貝を吹くので、腹筋や肺臓を鍛えます。口元の筋肉も引き締まるので、表情が豊かになります。そのほか、仏花やお香の薫りによって精神を安らげ、仏像や仏画を見つめて瞑想に誘導できます。法話をするには読書や考える力が必要ですから、痴呆の予防にもなりましょう。
ただ、私はこのほかに毎朝、水平足踏みを3分間と腕立て伏せ20回を実践しています。水平足踏みとは文字どおり、膝を床から水平になるまで上げながら呼吸法と共に足踏みをする運動で、ご宝前に供えるお茶を沸かす間にちょうどよいのです。スクワットもおすすめですが、腰痛のある方には負担がかかるかも知れません。
また、あさか大師のとなりを流れる新河岸川の土手が、今年の春から遊歩道(自転車道)となりました。私は夕方か夜に、愛用の自転車でサイクリングをしています(写真)。
余談ですが、ここは池波正太郎の名作『鬼平犯科帳』第八巻「流星」の舞台です。原作には「新河岸川は荒川と略並行して武蔵野をながれ、やがて川の口(現和光市・下新倉)のあたりで荒川に合流する」とあります。現在の東京外環自動車道のハープ橋(さきたま大橋)のところが、その合流地点です。鬼平の時代から240年後の景観です。