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あさか大師
令和7年5月11日
あさか大師にお参りする弟子僧やご信徒の皆様は、境内の六地蔵・水子観音と共に、「遍路大師(写真)」に礼拝して本堂に入ります。この遍路大師のお姿こそは、お大師様の原点であり、後に真言密教を打ち立てる根底となるものです。
お大師様は十八歳で奈良の大学に入学し、官吏への道を歩まんとしました。しかし、仏教への求道心が止まることなく、中退して山岳修行に励まれました。まさに身を捨てての苦修練行であったと拝察されます。
特に虚空蔵菩薩の真言を百万遍お唱えする「求聞持法」と呼ばれる修行には渾身のお力で臨んだのでありました。すなわち、この自然界も宇宙も自分自身そのものであり、虚空に遍満する仏と同体であるという悟りに到達したのであります。水の流れ、風の音、野の花、鳥の声、すべてが仏の説法であるという境界は、曼陀羅の教えそのものであります。
お大師様は三十一歳にして唐に渡り、真言密教を相承しましたが、その原点はこの遍路大師の時代にありました。そして、お大師様が歩まれた道が今日、巡礼の遍路となって残されたのであります。遍路大師はお大師様を信仰するすべての方々の原点でもありましょう。