カテゴリー
心
令和元年11月20日
昔のアメリカ映画ですが、実話を元にした『終身犯』という作品がありました。
主人公のロバートは、恋人に乱暴をした男を殺した罪で懲役12年の判決を受け、刑務所に服役していました。しかし、母のエリザベスを侮辱した看守をさらに殺してしまい、死刑を宣告されました。ロバートはいうなれば、殺人という最も恐ろしい業を背負って、この世に生れて来たのです。しかし、悲しんだ母が嘆願運動を行った結果、終身刑にまで減刑されました。
ある日、彼の独房に一羽の傷ついた小鳥が迷いこんで来ました。退屈ですることもなかった彼は、この小鳥にかぎりない愛情を注ぎました。独房の貧しい食事を与え、必死に看病を続けました。そして、ついにその小鳥が元気を回復して飛び立った姿を見て、彼はこれまでに味わったことのない人生の喜びに打ち震えました。
彼はその後、独房で許されるかぎりの鳥を飼育し始めたのです。そのための研究書も取り寄せ、同好の人とは文通での相談役にもなりました。彼の研究はいよいよ深まり、論文も高く評価され、その道の権威にさえなりました。また、彼の業績に対する減刑運動が起こったり、彼の論文に共鳴した未亡人のステラと獄中結婚までしたのです。
そして、彼の獄中での態度も評価され、やがて他州の刑務所に移されることになりました。新たな刑務所で鳥の研究ができることに夢をいだきつつ、終身犯のロバートは希望に満ちた未来に向かうのでした。
殺人という狂悪な犯罪と、献身を捧げる美しい慈善と、人の心にはいずれともなく秘められています。ただ、その縁に触れて業が催し、悪事に染まらぬことで、人はまずまず平穏に生きられるのです。しかし魔の誘いは、いつ訪れぬともかぎりません。