2019/09の記事

占いの落とし穴

カテゴリー
運命

令和元年9月5日

 

昨日は清水次郎長が徳を積んだ後に死相しそうが消え、運命を変えたお話をしました。

これはもちろん、徳を積むことの大切さを伝える象徴的なエピソードです。ところで、占いでは〈相〉という分野があり、人相のほかに手相・家相・地相・墓相・名相・印相などがあります。そこで、占い師の方はこれらを指摘して運の悪さを主張します。人相や手相はともかく、住んでいる家や土地が悪い、お墓の向きや造りが悪い、名前の画数が悪い、印鑑の文字が悪いといった言い方をします。そして、開運するためには、これらを正さねばならないと力説するのです。しかも、占い師の方が言うことは、とても〝当たる〟のです。だから、大方の人は「なるほど」と思ってしまうのです。

私は占いもしますので、このことを否定するつもりはありません。よく、家相や墓相の相談を受けたり、名づけを依頼されたりします。しかし、占いには深い落とし穴がありますので、そのことを申し上げましょう。とても大切なことなので、皆様にぜひ知っていただきたいのです。

たとえば、病気で顔色の悪い人がいたとしましょう。では、その人が病気になったのは、顔色が悪いからでしょうか。つまり。顔色が悪いことが病気そのものの原因なのでしょうか。

奇妙なお話ですね。本末転倒とはこのことです。顔色が悪いことは結果であって、原因ではありません。病気になって体調をくずし、その結果が顔色という〈相〉になって現れたわけですから、病気の原因はほかにあるわけです。生活習慣が悪いなら、それを正さねば根本的な治療にはなりません。占いで指摘することは、あくまでもその〈相〉なのです。つまり、これまでのあらゆる生き方が〈相〉となって現れるのです。占いはここを指摘するのですから、よく当たります。しかし、開運への根本的な手立てにはなりません。ここに占いの落とし穴があるのです。

次郎長は不徳を積んでいたがため、顔に死相が出ていたのです。しかし、若い二人の命を救って、徳を積んだゆえに死相が消えたのです。占いで指摘する〈相〉を変えることは、いわば〝見た目〟を変えることです。もちろん、見た目も大事なので、私は占いも重視しています。しかし、不運を根本的に変えることは、占いではできません。

不運を乗り越えるために徳を積むことを〈立命りつめい〉といいます。文字どおり、新しい命を立てるという意味です。運命や宿命と共に立命という言葉があることを、私は強く主張したいのです。

運命を変えた清水次郎長

カテゴリー
運命

令和元年9月4日

 

今日は清水次郎長のお話です。 皆様もご存知のとおり、次郎長は幕末から明治にかけての大親分ですが、決して生まれながらの任侠にんきょうではなかったのです。二十歳頃までは米屋の家業に精を出し、重いたわらをかついで懸命けんめいに働いていました。

ある日のこと、店先に托鉢たくはつの僧が立ちました。次郎長はさっそく米を布施ふせしましたが、その僧から「お前さんの顔には死相しそうが出ている。あと三年の命じゃな。わしの観相は外れたことがないが、もし外れたらこの首を差し上げることを約束しよう」と言われました。次郎長はその僧がまんざらウソを言っているとも思えず、さんざんに悩みました。そして、「どうせ三年の命なら、やりたい放題したい放題に生きよう」と考え、女房も離縁して任侠の道へとみ込みました。次郎長は持ち前の度胸どきょうでたちまち顔が売れましたが、今日死ぬか明日死ぬと気が気ではありません。

そして三年が過ぎました。次郎長は死ぬどころか、風邪ひとつ引かず、ますます元気です。「さてはあの坊さん、ウソを言いあがった」と思うのも当然です。そんなある日、とうとうその托鉢の僧と再会しました。次郎長はさっそく「約束どおり首をもらうぜ。覚悟しろ」と迫りましたが、その僧は「待ってくれ。そなたの顔をもう一度見せてくれ」と言うのです。そして次郎長の顔をまじまじと見つめるや、「これは不思議じゃ。死相がまったく消えている。お前さん、わしに会ってから人の命を救ったことはなかったか」と言うのでした。

実は次郎長、この僧と会ってから、心中しようとしていた若い男女の命を救ったのでした。しかも、男が使い込んでしまったという奉公先での三十両を代償し、商売を始める店までも面倒をみたのです。僧は「ああ、よいことをされたのう。お前さんは二人の命を救うと共に、自分の命も救ったのじゃ。死相が消えたばかりか、八十歳までは生きられるぞ。あいがたいことじゃ。ナンマンダブ、ナンマンダブ」と言いながら立ち去りました。

このお話はまさに、運命を決定するものは〈徳〉であるということの証明でもあります。人生を決定するのは宿業しゅくごうですが、徳が宿業を変え、運命を変えるのです。徳を積むことの大切さを伝えるお話として、私はとても大事にしています。

成すは易く、守るは難し

カテゴリー
人生

令和元年9月3日

 

昨日は「組織の膨張ぼうちょう衰退すいたいをもたらす」という、パーキンソンの法則をお話しました。企業が売り上げを伸ばして本社ビルが建つや、安堵感あんどかんから慢心まんしんをおこし、加えて新築による経費の増大から、経営が悪化する例が多いということでした。今日はその延長として、個人の業績についてお話をいたしましょう。

たとえば、芥川賞や直木賞に輝いた新人作家の、はたして何人が存続しているでしょうか。デビュー当時の作品は、たとえどこかに未熟さはあっても、勢いがあるものです。しかし、その勢いを保ち、かつ新鮮な作品を発表し続けるということは容易ではありません。たいていは作品のネタすらも尽きます。私は今どきの文壇に詳しいわけではありませんが、この傾向は多分にあるはずです。

このことは、芸術や芸能、またスポーツにおいても同じでしょう。デビュー当時の作品や記録はすばらしくとも、それを存続させることが大変なのです。私の知っているある歌手などは、始めにヒットを飛ばしましたが、続きませんでした。だから、死して今なお人気のある、美空ひばりや石原裕次郎などは、本当にすごい人なのです。スポーツではよく「追われる立場」と言いますが、オリンピックの金メダリストなどは当然、世界中から徹底的に研究されます。そんな中で絶対王者を守ることは、至難としか言いようがありません。

私たちが関わるどのような職業や趣味においても、このことは大きな教訓でもありましょう。物ごとを始めて、それを大成させることも大変ですが、存続させることはさらに大変です。まさに、「すはやすく、守るはかたし」なのです。才能があってそれを発揮しても、その業績を守れるのは、必死の努力に加えた何かが必要なのです。

続・パーキンソンの法則

カテゴリー
社会

令和元年9月2日

 

若い頃、住んでいた所の近くに、とても繁昌してるうどん屋さんがありました。

特に昼時になると、10メートルほどの行列ができるのです。ただ、店構えはプレハブ作りで、とても古いものでした。私はそこを通りがかっただけで、一度もそのお店に入ったことはありません。でも、そのうち新装開店になるのだろうと思っていました。そして予想どおり、やがて立派なお店が新築されました。常連のお客さんも喜んだはずです。

もちろん、始めは以前のように行列もできました。ところが、しだいに「おや?」と思うほど客数が減っていきました。行列も見られなくなっていったのです。そして、とうとうそのお店は解体され、まったく別の建物にと変わりました。

私は、このような例をほかにも知っています。食べ物屋さんの店構えが変わると、シェフが変って味も変わるのでしょうか。それとも返済のため、経費節減で素材まで落としたのでしょうか。

実はここにも、「組織の膨張ぼうちょう衰退すいたいをもたらす」というパーキンソンの法則があるのです。彼は企業が建物の新築を計画すると、そこから崩壊ほうかいきざしが見えることを発見しました。なぜなら、発展に向かっている間は仕事への情熱が先で、店構えや本社ビルなど眼中にありません。ところが、多いに利益を得て建物が変わると、慢心まんしんがおこるのです。ここまでになったという安堵感あんどかんが慢心を呼び、経営を悪化させることが多いのです。さらに、新築による経費は予想以上に増大します。あのうどん屋さんのみならず、バブル期の新築が崩壊を招いた例はキリがありません。

もちろん、逆に急成長を遂げる例はありましょう。しかし、この法則にも自戒すべき要素は多いはずです。貧しくとも情熱に燃えていると、それが仕事にも現れます。まさに、「貧しき者は幸いなり」なのです。私にも身に覚えがあることです。

パーキンソンの法則

カテゴリー
社会

令和元年9月1日

 

何となく気づいたことなのですが、収入と支出はそれぞれに比例するようです。つまり、収入の多いお金持ちは豊かな暮らしをしていますが、それだけ経費がかかります。収入の少ない貧しい人は生活は苦しいけれども、あまり経費をかけずにそれなりに生きているということなのです。

たとえば、お金持ちは食事をすれば高級レストランに入り、旅行に出れば高級ホテルに宿泊します。広い住宅に住み、立派なドイツ車に乗り、ブランド品の衣服を着用し、子供には英才教育をしますから、万事に費用がかかり、税金も大変です。貧しい人はそんなことは無理とあきらめ、どうにか生活ができればよいのです。冷凍食品やコンビニのお弁当でも我慢ができますし、バーゲンやリサイクルを利用して何とか工面します。そして、時おり家族で〈回転ずし〉にでも足を運べば、充分に満足します。収入は少ないけれども支出も少なく、税金も少額です。

この事実には「支出額は収入に見合うまで増加する」というパーキンソンの法則があることを、最近になって知りました。つまり、お金は入れば入るほど出るという意味です。収入が増えれば支出も増える法則は、未来永劫みらいえいごう変わらないとまで喝破かっぱしています。大いに自戒せねばなりません。

中国の『礼記らいき』に、「るをはかりてずるをせいす」という言葉があります。パーキンソンの法則から私たちが学ぶべきは、このことでしょう。つまり、本当に必要なもの以外は、買わないことです。それでなくても、私たちの身辺にはローンを始めとして、多くの情報に誘惑されるはずです。テレビのショップ番組や、ネット販売の衝動しょうどうを制するのも容易ではないはずです。衝動を制す前に、まずは自分を制さねばなりません。自分を制すれば、ずるを制するのです。

山路天酬密教私塾

詳しくはここをクリックタップ