人は「動かせる」ものか

カテゴリー
仏教

令和5年9月22日

 

本棚を整理しましたら、D・カ-ネギー著の『人を動かす』(創元社)が出て来ました。著者は二十世紀のアメリカにおける人間関係研究の先駆者で、同著は世界的なベストセラーとなりました。私も若い頃に赤線を引いて何度も読んだ、なつかしい本です(写真)。

どんなことが書いてあるのかを簡単にお話しますと、第一部は「人を動かす三原則」、第二部は「人に好かれる六原則」、第三部が「人を説得する十二原則」、そして第四部が「人を変える九原則」です。たとえば、第二部においては「議論に勝つ唯一の方法として議論をける」に始まり、「誤りを指摘しない」「こころよく認める」「おだやかに話す」「相手にしゃべらせる」「相手に思いつかせる」「対抗意識を刺激する」などといった項目を並べて解説しています。

たしかに、議論に勝ったからといって、相手の感情を傷つけるばかりですし、相手の意見をさえぎる人は好かれません。また人をしかったり、注意を与えるといいながら、ほとんどは腹を立てて怒っているに過ぎません。こうした対人関係の悩みに対して、この本は確かに大きなヒントを与えてくれます。

ただ、私の意見を一つだけお話しますと、人は「動かせる」ものでしょうか。人は「動かす」ものではなく、「動いてもらう」という考え方のほうがよいように思います。人を手品のようにあやつって動かすのではなく、自分から動いてもらえる関係を築くことが大切でしょう。そのためのノウハウは、この本の中にもたくさんあります。

動かしたかったら動いてもらいなさいという逆発想こそ仏教的でありますし、『般若心経』の教えでもあります。久しぶりに手にした本から、そんな感想が湧きました。皆さん、いかが。

山路天酬密教私塾

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